晴。
藤田覚『幕末の天皇』読了。幕末の光格天皇、孝明天皇に焦点を当てて書かれた歴史書。とりわけ光格天皇(1771-1840)に詳しい。光格天皇の在位は一七七九年に始まり、江戸時代の天皇にはめずらしくも院政を布いて、六〇年以上も権力の座にあった。光格天皇こそ、形骸化していた天皇という権力に、再び力を与えようと努めたのである。とにかく天皇の地位を高めるための、先例を作ろうと色々試みたのであり、そしてそれは、本書に拠れば、かなり成功したと云っていいだろう。孝明天皇はその孫にあたり、尊皇攘夷を強く主張したことはよく知られている。本書はどちらかと云えば、幕府より朝廷の方に同情があると云えるが、しかし、かかる記述を読んでも、孝明天皇は幕末の情報をあまり得ずに、信念として尊皇攘夷に加担したように見え、現実家ではなかったように印象付けられる。攘夷がまったく現実的な対応ではなかったことは、明治政府の誰一人としてそのような考えの持ち主がいなかったことから見ても、明らかだと思われる。
また、本書を読めば、幕府と朝廷のやり取りがどのような組織になっていたかが、よくわかる。このような部分に光を当てた書物がどれくらいあるのか知らないが、自分には貴重な記述だった。
いずれにせよ、幕末において天皇がこのようなあり方になったことは、日本の歴史に大きな影響を与えたことは間違いあるまい。もう少し勉強したいところである。
- 作者: 藤田覚
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2013/02/13
- メディア: 文庫
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