ヘルマン・ワイル『精神と自然』/広瀬立成『相対性理論の一世紀』

休日(体育の日)。雨。夜、台風通過。
音楽を聴く。■ブラームスクラリネット五重奏曲op.115(アレッサンドロ・カルボナーレ、参照)。自分には役に立つ演奏。悪いとは思えない。■サン=サーンスオーボエソナタop.166、デンマークとロシアの歌による奇想曲op.79(ナッシュ・アンサンブル、参照)。

ヘルマン・ワイル『精神と自然』読了。ワイルは物理学や数学の先端において、時代を切り拓く様々な重要な仕事をしてきた大学者である。本書はその講演録であり、ワイルが物理学や数学のみならず、哲学についても第一級の能力をもっていたことを如実に示すものになっている。何という学者であろうか。ワイルは同時代の物理学と数学のほぼ全領域に通じていた最後の学者と云われるが、どうしてこのようなことが可能であったのか、本書はそのヒントになりそうだ。もちろん、自分などに理解できたのは本書の一部分だけではあるが、知的な刺激を受けること夥しかった。内山先生の訳されたワイルの名著を、再び繙きたくなったくらいだ。薄っぺらい学問にウンザリされている方など、本書はいかがだろうか。

精神と自然: ワイル講演録 (ちくま学芸文庫)

精神と自然: ワイル講演録 (ちくま学芸文庫)

広瀬立成『相対性理論の一世紀』読了。アインシュタインの生涯を辿りながら、相対性理論特殊相対性理論一般相対性理論)をわかりやすく解説した本。数式はあるが、数式を理解しなければ先に進めなくなるということはない。一般相対性理論にかなりの説明が費やしてあるのも特徴だ。ただ、アインシュタイン量子力学に関する貢献については、初期の光電効果以外には触れられていないのは残念である。最近では、アインシュタイン量子力学を理解できなかったという紋切型は、過去のものになったと云えよう(例えば、EPR相関)。本書は決してアインシュタインの全業績を解説したものではないので、その辺は注意が必要である。また、統一場理論の発展についての記述は駆け足なので、これだけでは初学者には殆どわからないかも知れない。それらを除けば、一般向けのものとして、悪くない本だと思う。しかし、類書は汗牛充棟の有り様なので、本書がベストかどうかはわからないが。
相対性理論の一世紀 (講談社学術文庫)

相対性理論の一世紀 (講談社学術文庫)