飯田泰之『飯田のミクロ』

雨。
飯田泰之『飯田のミクロ』読了。新書版のミクロ経済学の教科書。自分にはまさしく、こんな経済学の教科書が欲しかった、という本になっている。基本中の基本から説き起こした本で、普通の経済学の本では(当たり前だとして)無視されがちな、経済学の前提条件から説明してくれるのがありがたい。例えば、敢てひと言で「経済学とは何か」と聞かれたらどう答えるか。著者はそれは、「希少な資源の最適な配分を考える学問」だと言い切っている。「希少」とか「資源」なども、経済学独特の意味を持っているのだが、とにかく明快ではないか。そして、そのベースとなっているのが、「方法論的個人主義」である。これはただの個人主義とはちょっとちがって、役に立つから個人主義的な思考方法に従おう、くらいの考え方である。
 これほど基本的なところから説き起こしつつ、かなりのレヴェルまで誤魔化しなしに議論が展開されていく。(普通の教科書で始めに出てくる、需要曲線と供給曲線の交点で均衡、というのが後回しにされていて、驚いた。これは意図的なものである。)抽象的な思考に慣れるため、数式も敢て使われるが、基本的に中学までの数学で書かれており、文章による説明と図も多用されるから、まことに親切だ。自分は第三章まではみっちりと読み、あとは後日を期して流し読みしたが、ここまででもかなりミクロ経済学が理解できたという感じがしている。今までの経済学の教科書がいまひとつ理解できなかった人には、本書はいい教科書になる可能性があると思う。

飯田のミクロ 新しい経済学の教科書1 (光文社新書)

飯田のミクロ 新しい経済学の教科書1 (光文社新書)