晴。朝はすごい蝉時雨。
ガブリエル・タルド『模倣の法則』読了。タルドの云う「模倣」は、認識論的にはもっと詰められるし、詰めるべきだと思う。人間の心的活動として、まず「発明」があり、それが「模倣」されるだけで全てだというだけでは、何を言ったことにもならないだろう。しかし、タルドには、そのような考察をする意志はないようだ。語の社会的な適用に意識があるように見える。もっとも、もともと心のなかにあった観念と、外部から入ってくる「模倣」が衝突した場合、それらが対立していずれかが消滅するか、融合していずれでもないものになる、というような考察はあるが。また、外的な「模倣」よりも内的なそれの方が先行するというのは、確かにそのとおりだろう。我々は、それと知らずに、「思想」(「イデオロギー」と云ってもいいだろう)に影響され、それに基づいて(あるいは動かされて)、「自分の意見」(というのはじつは問題なのだが)を表明するわけだ。
本書のメインである歴史的な検証は、かなり面倒くさいものだ。自分の無知もあって、記述についていくのが大変だった。そもそも、タルドが言及している書物を、こちらはほとんど読んでいない。せいぜいブルクハルトその他少々という感じで、フェステル・ド・クーランジュなどは前から読んでみたいと思っているが(ちくま学芸文庫か何かで文庫化されないかな)、まだ果たせていない(しかし、タルドが少し前の人なので、これらの文献も古いよね。いまでは読む人は少ないだろう)。だから、この歴史的検証が的を射ているかは、自分にはちょっとわからないところが多い。
なお、著者タルドは、社会学の創成期に、社会学の理念をめぐってデュルケームと激しく論争しているらしい。図式的に云うと、デュルケームは実念論者であり、タルドは唯名論者であると云えるかも知れない。歴史的にデュルケームの立場が主流になったので、それでタルドは一時的に半ば忘れられたのだという。
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