パヴェーゼ『祭の夜』

雨。
パヴェーゼ『祭の夜』読了。岩波文庫パヴェーゼも、これで四冊目である。まだ続きそうな感じで、嬉しい企画だ。本書は、パヴェーゼの遺稿からカルヴィーノが編んだ短篇集で、パヴェーゼの小説の出発点となるものである。実際、長編小説のプロトタイプであると思われる作品が、本書で読める。翻訳も河島英昭氏による繊細なもので、訳者解説は必読だろう。
 しかし、パヴェーゼの小説に出てくる男性の主人公は、どうもつき合っている女性に酷い仕打ちをするな。もちろん乱暴するというわけではなく、女性(たいていやさしい人だ)に対して、相手を性欲の対象としか見ていないかのように振舞うのである(よけい悪いか)。けれども、相手に対して心を許していないかのように振舞うくせに、女性が離れて行ったり自殺したりすると、衝撃を受けるのだ。おそらく自伝的な事実があるのだろうが。

祭の夜 (岩波文庫)

祭の夜 (岩波文庫)


今の子供たち(小・中学生)の心のひどさは、近年頓に目に余るようになってきたが、今日また衝撃的な話を聞かされた。あまりのことで、ちょっとここには詳しく書けないが、唸らざるを得なかった。もちろん表面的には「いい子」がほとんどなのだが、かなりの子が多かれ少なかれ、心の奥の方から腐ってきている感じを受ける。上手く言いにくいが、「普通の」感覚をもった子の方が、今では少ないくらいである。何か、他人に対する人間的な感情がなくなってきているというか。やってはいけないことが、平然とできてしまうというか。よく言われる、自分だけがよければいいという感じも、確かにある。原因はまだ自分にはよくわからないのだが、おかしな親(自分の世代である)が増えてきているのも事実だ(でも、それだけが原因とも思えない)。もしかしたらミシェル・フーコーの云う「人間の消滅」というのは、こういうことなのだろうか。こうした感じは、年々強まるばかりである。大変なことになってきたという思いだ。自分の気のせいだとか、たまたま自分の周りだけのことなら、幸いであるが。