休日。晴。
細川巌『龍樹の仏教』読了。龍樹というと、舌鋒鋭く、何となく小難しいようなイメージがあるが、本書が取り上げている『十住毘婆沙論』なる著作は、迷える凡夫に向けて書かれたものだという。龍樹にそのような著作があったとは知らなかったが、本書の解説するその内容は、まことに有難いものである。龍樹に云わせると、仏教の急所は、その取っ掛かりにあるのだ。そこを超えてしまえば、後はすらすらといくなどと、龍樹は述べている。著者は親鸞の龍樹理解(これが大切なのだ)を血肉化し、その素晴らしさを現代に活かそうとしておられる。というような、本書は精神性の高い、大変立派な書物であり、個人的に得るところがたくさんあった。そして、著書から窺われる著者自身も、至極立派な人だと思う。
※追記 あるブログで、本書を評して、『十住毘婆沙論』はすべてが龍樹の手になるものではないとか、解釈に(浄土)真宗のバイアスが掛っているとかいうような記事を見かけたが、呆れた。そのようなことは、反論も含め、本書自体の中にきちんと断ってあるではないか。そして、本書の文章を読んで、そんな感想しか出てこないというのは、不感症というか、憐れむべきとしか言いようがない。こういうのを、仏教に縁なき衆生というのであろう。
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