鈴木大拙『浄土系思想論』

晴。
音楽を聴く。■バッハ:ハープシコード協奏曲第一番 BWV1052(デイヴィット・モロニー、参照)。最初に聴いたときとちがう感想のようだが、とにかく凡庸というしかない。まだバッハを弾くに至っていない感じ。ただ、終楽章は同じアプローチなのだが、まだ曲とマッチしていてふつうの演奏。

鈴木大拙『浄土系思想論』読了。未熟極まる自分が、本書をわかったふりはしない。自分の家の宗教は(浄土)真宗であるが、「南無阿弥陀仏」を唱えさえすれば極楽に至れるといわれる教義が、どうも大乗仏教としてはよくわからないと思ってきたものである。大拙の『日本的霊性』を読んで多少考えが改まったが、まだ雲を掴むようであった。いや、それは本書を読了したいまでもさほど変ってはいないけれども、真宗が間違いなく大乗仏教と云ってよいことは、ほぼ確信した。大拙によれば、禅と真宗は、インドから中国を経て伝来した仏教を日本人が活かした二つの実例ということになる。それにしても、禅はいわゆる自力であり、真宗はいわゆる絶対他力で、この観点からすれば正反対とも言えるが、大拙はここに禅の方から真宗に架橋することを試みている。自分にはわからないことが多かったが、なるほど、驚くべき対応関係が発見されるものだ。本書に関しては自分などにわかる筈がないとは言いたくないので、何とか考え抜いてみたいものだと思う。このところの岩波文庫への鈴木大拙の収録、とてもいい仕事だと思わざるを得ない。これが日本人のためになることを心から願いたい。

浄土系思想論 (岩波文庫)

浄土系思想論 (岩波文庫)