佐藤優『私のマルクス』

晴。久しぶりに気持ちのよい日。
佐藤優『私のマルクス』読了。著者の思想的自叙伝というか、自己形成史というか。同志社大学神学部生の頃の回想がメインで、自分などからみると、思想的にも実存的にも、おそろしいまでに濃密な学生生活が活写されている。読者をぐいぐい引っ張っていく文章の力がすごい。最近でもっとも強烈な印象をあたえられた本になった。マルクスキリスト教神学を同時に学ぶという、ラディカルさ。人間としての魅力。強い絆で結ばれた友人たちと、懐の深い教師たち。深い感嘆とともに読了した。

私のマルクス (文春文庫)

私のマルクス (文春文庫)


ある検索語で拙ブログに迷いこんできた人がいて分ったのですが、最近のあるCDで、「戦争に反対する唯一の手段は、各自の生活を美しくして、それに執着することである」なんてのをタイトルにしたものが出たそうです。吉田健一の言葉なのだそうですが、当方も検索してみたところ、「いい言葉」だとか「今の時代に必要な言葉」だとか、みな感心していたのには気が滅入りました。美的生活の中に、例えば北朝鮮が核ミサイルを打ち込んできたら、終りではないのでしょうか。美的生活をして、パレスチナ人は生きていけますか。別に美的生活はいいのですが、平和だからできるのでしょう? それで戦争に反対できるなんて…馬鹿も休み休み云え。だいたい、美的生活をしていたブルジョワたる吉田健一は、太平洋戦争を止められたのでしょうか。