上野千鶴子と辻元清美

晴。
上野千鶴子と辻元清美の対談『世代間連帯』読了。ちょっと今細かいところに触れる余裕がないが、次の選挙の前に読んでおくといい本だ。といっても選挙便乗本などではなく、これからの社会や政治のあるべき姿について、じっくりと語り合われたものである。(また、予想されるような、単なるフェミ本でもない。)正直言って、自分の力では本書を完全に咀嚼できなかったが、それくらいというか、中身は大変に濃い。問題は相互に絡み合っており、どこに着目するかで、取るべき施策は大きく変ってくることがよくわかる。
 辻元もよく勉強しており、ちょっと見直したというのが本音だ。
 上野は本書で何度も言っている。「この『社会連帯』の理念が、まだ息の根を止められていないうちに、制度をちゃんとつくり直さないと、手遅れになっていまうよ」と。まだ、間に合うということだ。政治が民衆の大部分を生きづらくさせようとしていく、というのは何かおかしな話で、どうしてそうなるかと思うのだが、アメリカを見ても、その方向はそう簡単には修正できない。例えば企業で働くのは民衆だが、企業には企業の論理があり、そこで働く人間から搾取しようとするというのは、どこかで既に散々聞かされてきた話だが、依然としてそうなのには、まったく驚かされる。かつてと違うのは、「資本」の論理の代りに、企業の論理になったということだ。これは、誰が企業を動かしても、そうなるのである。これからの施策はだから、「対資本」ではなく、「対企業」ということになるだろうが、企業をつぶせないというのが問題で、政治や企業の側もそこを突いてくるだろう。そこがむつかしい。

世代間連帯 (岩波新書)

世代間連帯 (岩波新書)