初期ポリーニのベートーヴェン

曇。夜雨。
ポリーニはもう三十年以上もかけて、ゆっくりとベートーヴェンピアノソナタを録音し続けているが、若い頃に録音した後期ソナタ集は、今聴いても鮮烈である。演奏はモダニズムの極致であり、大理石の彫像を思わせるような造形美に加え、完璧な音楽的教養によってコントロールされた、一つの極北のベートーヴェンとなっている。これがop.109のような、一種叙情的な曲と出逢ったときの結果といったら! これまで何度聴いてきたか、わからないほどだ。これは単純にアポロン的とは云えまい、ディオニュソス的でもあろう、ニーチェのいうギリシア人の特性というべきか、そこが凄いところだ。今のポリーニもいいが、思えば遥けきも来たものである。

ベートーヴェン:後期ピアノ・ソナタ集

ベートーヴェン:後期ピアノ・ソナタ集