福田和也『日本の近代(下)』

曇。
誕生日。
福田和也『日本の近代(下)』(isbn:9784106102622)読了。この本は、普段「日本」とか「日本人」とか「国家」とかあまり思わない自分のような者まで、動かす力を持っている。それは主題によるもので、日本の近代というものが、いかに多くの犠牲の上で成り立ってきたか、という事実が、人を動かさざるを得ないのだと思う。「こんないい時代に生まれてラッキーだった」という声を、自分の友人たちの多くから嘗て聞いてきたものだが(八〇年代のような時代に十代を過すと、そんな風になってしまいがちだったのだ)、それが何の上に築かれてきたのか、ということだ。
 それから、とりとめもない感想だが、時代の無意識に形を与える、というのは、現代、悪いことではない、否、天才的な仕事だ、などと思われているのが一般的だが、これは怖しいことでもある、ということは弁えておくべきなのだと思う。それで国を誤るということもあるのだ。今なら、「世界を誤る」ともなりかねない。