『ブナの森と生きる』

晴。
北村昌美『ブナの森と生きる』(isbn:4569601154)読了。森林学というのか、敢ていえば理系の専門家だが、文化史的な記述も立派だ。だいたい、文体が好ましい。照葉樹林帯文化に対するブナ帯文化は、ほぼ東北地方に重なり、豊富な木の実・山菜の利用、狩猟や漁労などを通した豊かな文化を育んできたが、米作が中心でないだけで、不当にも一段低い文化と見られていたというなど、昨日読んだ赤坂さんの本とも重なり合うところがある。また、日本人は自然に対して繊細な感性を持っているなどというが、実際に調べてみると、身近な植物のこともよく知らぬことが多く、むしろヨーロッパ人の方が自然に親んでいる、などというのも、その通りであろう。日本人の自然愛好というのは、どこか抽象的・文学的だというのである。まあ、日本の森林は低木が多く、ヨーロッパの森のように、中を気軽に歩くなどできないせいもあるだろうが。