福岡伸一『できそこないの男たち』

晴。
福岡伸一『できそこないの男たち』(isbn:9784334034740)読了。本書の主題である、「生命の基本仕様は女で、男はそれをカスタマイズしたものに過ぎない」というのは、別に新しい発見でも何でもないが、著者のいつもながらの話術の妙で読ませる。個人的には、第九章の「Yの旅路」の、DNA解析に拠る人類の系統図の中で、縄文人がかなり早い段階の分岐に当っているというのが、格別おもしろかった。それから、ちょっと揚げ足取りだが、エピローグで語られる、疾走する新幹線の壁に留っているカラカネハナカミキリが壁を蹴った瞬間、時速二百キロで後ろの壁に激突しなかった理由は、車内の空気分子がまた、時速二百キロで運動しているからではない。車内が真空だったとしても、カミキリは別に後ろの壁に激突しない(まあ、空気がなければ飛べないが、それは措いて)。それが「慣性の法則」である。