パク・ソルメ『もう死んでいる十二人の女たちと』

祝日(敬老の日)。雨のち曇。
 
昼寝。
 
珈琲工房ひぐち北一色店。今日のコーヒーは聞いたことのない場所のだった、どこか忘れてしまったが、ちょっと変わった味でおいしかった。
 図書館から借りてきた、パク・ソルメ『もう死んでいる十二人の女たちと』(邦訳2021)読了。日本版オリジナル編集の、短篇集。これはおもしろかった、不思議な味わいの文学で、いまでも「前衛」って可能なんだな、と思わされた。著者に前衛意識があるかどうかは、わからないが。リアリズムでもないし、ファンタジーでもないし、わけのわからない小説でありながら、意外と読みやすかったり。例えば日本の東日本大震災原発事故を取り上げながら、なぜかひどく小さくなってしまった男と日常を(もちろん韓国で)暮らす話、とか、ほんとわけがわからないのだが、何かのリアルがある。パラノイアックな想像力で書いたのなら、すごい才能といっていいかも知れない。そして、前にも書いたが、同時代的な閉塞感がしっかりとある。なのに、読んで外へ出たら、景色をちょっと新鮮に変える力があるなと感じた。訳者はいつもの斎藤真理子さん。他に『未来散歩練習』が邦訳されているので、これもいつか読んでみたい。

 
 
パスカル『小品と手紙』の続きを読む。
「最良の書物とは、読者が自分でもこれなら書けたかもしれないと思うような書物だ。唯一よいものである自然はまことに親しみやすく、ありふれている。」(p.286)
「けっして過去に囚われてはなりません。自分の罪を悔い改めるだけでよいのですから。しかしそれにもまして、未来に影響されてはなりません。未来は私たちにとってまったく存在せず、そこにたどり着くことはおそらく決してないからです。本当に私たちのものである時間は現在だけですし、神の御心に従って私たちが用いるべきなのも現在だけです。何よりもそこにおいてこそ、私たちの思いを吟味しなければなりません。それなのにこの世の人びとは一時も落ち着いていられないので、現在の生と自分が現に生きている瞬間のことはほとんど考えず、ただこれから生きるはずの瞬間のことばかり考えています。こうしてひとはつねに未来を生きる態勢にあり、けっして今を生きる態勢にはありません。」(p.343-344)
 
 
夜、しばらく雨降る。
強い雨
 
つい魔がさして X (Twitter)を見てしまう。ここに、日本の現状がよく出ていると思う。心が薄汚れた感じになる。それにしても、ありそうにない或る希望の存在を信じずにはいられない。
 自分の YouTube のリコメンドもひどい。つい絶望する。わたしは低俗なアニメ動画やアニメ YouTuber を観ていれば済むのだが。
 
自分のブログ本を少しずつ拾い読みしている。バカな行為だと思うが、仕方がない。
 
 
中沢さんの『今日のミトロジー』四周目読了。五周目に入る。
「反抗的人間は、この世界からさわられたくないのだ。世界の価値観にさわられただけで、嫌な臭いがしてくる。私にさわるな! 近づくな! だから表面上はおとなしく生活して、目立たないようにしている。自然と引きこもりがちになるため、健康そうな市民たちからは、からだだいじょうぶ? こころだいじょうぶ? と心配(しているフリ)されたりする。しかし反抗的人間に言わせてもらえば、あなたが思っているより私ははるかに健康です!」(p.257)
このうっせぇわ精神、わたしのことかと思った笑。中沢さんによると、これはグノーシスなんだという。