「川っぺりムコリッタ」(2021)を観る

晴。
 
NML で音楽を聴く。■ベルリオーズの「幻想交響曲」 op.14 で、指揮は小澤征爾サイトウ・キネン・オーケストラNML)。何という瑞々しい、フレッシュな音楽だろう! ありきたりの表現で申し訳ないが、小澤征爾はとても大病後の老人とは思えない。まるで、新しく生まれ変わった「幻想交響曲」だ。まさにこれこそ超一流、現代の最高峰。そしていまさらだが、サイトウ・キネン・オーケストラもまた(常設ではないものの)これ以上のオーケストラは現代にないといいたいくらい。第二楽章のワルツや、演奏後など、胸がいっぱいになってしまった。

 
いい天気。スーパー。
琴塚の山にツブラジイの花が見事に咲いていた。金華山にはこの樹が多く、ツブラジイの華が黄金色に見えることからその名がある。花はクリのそれに似た精液っぽい強烈な独特の匂いを放つ。岐阜市の木だそうだ。
 

モンキチョウ
 
昼からミスタードーナツ イオンモール各務原ショップ。ほうじ茶シュー 栗あんわらびもち+ブレンドコーヒー495円。
亀山郁夫さんの『ショスタコーヴィチ 引き裂かれた栄光』(2018)を読み始める。たちまち惹き込まれ、コーヒーを二回おかわりして一気に第一部130ページを読み切る。わたしはショスタコーヴィチを政治的な側面をあまり知らずに聴いてきたなと痛感する。もっとも、ショスタコーヴィチはこれまであまりにも政治的に聴かれてきたのであり、つまりはソビエト政権への公式的追従者として、見做されてきた。わたしは比較的ショスタコーヴィチの内心に近いであろう、室内楽を中心に彼を聴いてきたので、却って政治的な「雑音」を気にせずにきたといえるだろうし、それはむしろ幸運だったかも知れない。わたしが読んだのは、せいぜいヴォルコフの(有名な)『ショスタコーヴィチの証言』くらいであり、それもまともに受け取ったというわけではない(この本については Wikipedia にまとめられている。かつては中公文庫で容易に入手できた)。しかし、それはそれとして、本書はとてもおもしろい。ショスタコーヴィチ、それもわたしのあまり聴いてこなかった交響曲その他を、もっと聴きたくなる好著である。亀山さん、やるじゃんって感じ。 
 
夜。
『川っぺりムコリッタ』(2021)を観る。監督は荻上直子サブアカウントをもっている老母が U-NEXT のポイントで観たので、期限内にと観てみた。薄っすらとしたかなしみがずっと瀰漫していて、まあ途中では実際(おセンチなことに)ちょっと泣いたが。出てくるやさしい人たち皆んな、容易ならざる過去をもっているらしくて、彼らとかかわることにより、親の愛を受けられなかった前科者の山田(松山ケンイチ)がささやかな幸せを自分も感じていいと、そのことに気づいていく。現実ならたぶんそんなことはなかなかあり得ないかも知れないが、そこが映画のファンタジーで、人との交流をもって世界を肯定できるのだ。最後はアパートの皆んなが列になって、川べりをゆっくりと歩いて山田の父親(孤独死した)の葬儀とする。それが、ポジティブな終わりでよかった。老母の推しの荻上直子監督、初めて観たが、とってもよかったです。