松田武『対米依存の起源』

晴。
寝過ぎ。
図書館から借りてきた、松田武『対米依存の起源』読了。副題「アメリカのソフト・パワー戦略」。戦後のアメリカの対日戦略に関して、その文化面における研究書。基本的に日本における学問的なアメリカ研究への援助に関する事実を掘り起こしている。日本の大学人の対米依存は重要ではあろうが、自分には関係も興味もあまりない。それよりも、本書で扱っていない、ふつうの日本人の「アメリカ化」の方がよほど気になる。映画にせよ音楽にせよエンタメ小説にせよ娯楽にせよ、日本人のアメリカ依存はほぼ完成したと云えるだろうが、そのことに関する包括的な研究というのは、自分はよく知らない。どうして日本人はかくも「アメリカ化」したのか。戦後の日本人はアメリカの「豊かさ」に憧れたとはよく言われることである。それは主として「物質的な」側面であったが、それがアメリカ文化をも輝かせて見せたことは間違いないところであろう。そしてアメリカの「民主主義」。また一方で、アメリカの経済力と軍事力、アメリカに「戦争で負けた」という事実などが複雑に絡み合って、いまの日本(人)があることは確かであろう。当面はいまの状態が変わることはないような気がする。政治的には、誰が日本人の総理大臣になっても、アメリカの顔色を伺い続けるのはやめられないだろう。
 本書については何も語らなかった。自分に本書の評価などできないが、アメリカの対外戦略が文化面にまで及ぶものであり、それがまた徹底して考え抜かれているのはさすがにアメリカであるとは思った。しかしまあ、こういうことは程度のちがいはあれ、今ではどの国でもやっている。日本は相変わらずこういうことは苦手で、「クール・ジャパン」云々など苦笑したくなってくるようなものである。本気であれが「文化戦略」たりうるとでも政府関係者は考えているのであろうか。ああいうことを繰り返さないためにも、「クール・ジャパン」政策の功罪は真剣に研究の対象にされねばならないだろう。若い研究者に期待したい。

対米依存の起源――アメリカのソフト・パワー戦略 (岩波現代全書)

対米依存の起源――アメリカのソフト・パワー戦略 (岩波現代全書)

しかしまあ、国家の「文化戦略」なんてものに真剣に荷担したいとも思わないのではあるが…。非国民だな。今の日本文化というと、マンガやアニメだということだそうだが。僕もそれらはキライではないですけれど。マンガやアニメで育った世代だからね。例えば「アニメ『攻殻機動隊』の卓越性」とかなら語ってみたい気もする。しかし、そういうことは後の世代に任せたいですね。