中沢新一編著『吉本隆明の経済学』/植木雅俊『仏教学者 中村元』

曇。のち雨。
音楽を聴く。■バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第三番BWV1006(ミルシテイン参照)。

中沢新一編著『吉本隆明の経済学』読了。深い感銘を受けた。今の自分には本書の内容を語ることはまったくできないが、とにかく吉本さんがこんな文章を書いていたとは、驚きの連続であった。これでも、吉本さんの本は結構読んでいると思っていたのだがねえ。「詩人」と「経済学」が結合する必要があったとは。これからこの本が受けるであろう数多くの侮蔑を思うと既に悲しくなってくるが、現在主流の経済学の勉強と同時に、本書の内容について繰り返し考えようと思う。まだ、こんな本が出る現実があるのだ。

吉本隆明の経済学 (筑摩選書)

吉本隆明の経済学 (筑摩選書)

図書館から借りてきた、植木雅俊『仏教学者 中村元』読了。中村元の名前はもちろん知っていたが、これまで何故か殆ど読んでこなかった。東大の先生だから、その道の権威なのかと思っていたが(別に権威でもいいわけだけれど)、ちょっと勘違いをしていたところがあった。東大を退官されてからは、私塾のような「東方学院」というところで教え、研究する日々だったという。本書の著者はその「東方学院」でのお弟子さんで、在野で立派な研究をなされておられるような方である。本書はどこかいい意味で素朴なところのある、感動的な本だ。中村元が本当に(色々な意味で)偉い学者だったことがよくわかった。写真を見ても、これまた素朴な感じの、笑顔の魅力的な学者である。中村元は初期仏教のイメージを塗り替えた世界的な仏教学者であるだけでなく、その前に立派な人間でもあったわけだ。膨大な著作を残されたが、文庫でもたくさん出ているから、これからは気をつけていよう。いい本でした。