晴。
音楽を聴く。■バッハ:フルート・ソナタ ハ長調BWV1033(ランパル)。■ルーセル:交響曲第三番op.42(バーンスタインNYPO)。これ面白い。
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エラスムス『痴愚神礼讃』読了。沓掛良彦訳。読んでいく内に、今の自分の気持ちによく合った本だという思いを強くした。痴愚、何が痴愚って、幻想を偶像視してお互いに争うなど、愚の骨頂だということである。今は嫌な時代で、大きな幻想に多くの人が囚われて、口角泡を飛ばし合っているという愚かさを露呈している。誰だって、多かれ少なかれ痴愚なのだ。自分こそ正しいと盲信する者は、必ず人に害をなす。そういう極めて大切な教えを、エラスムスの中に読み取らざるを得なかった。決して本書は、歴史に埋もれた骨董品ではない。
本書はラテン語からの原典訳で、訳者の沓掛氏は、少し前に出た大出晃の原典訳のあまりの酷さが、本訳書に取り掛かるきっかけだったと述べている。自分もかつて読んだ渡辺一夫訳は、フランス語訳からの(極めて優れた)重訳なのだそうである。これは沓掛氏に、同じエラスムスの『対話集』も訳してもらいたいものだと希望する。それにしても、最近はすっかり質の落ちた中公文庫であるが、久々のヒットだった。またシブい古典の翻訳でも入れて下さい。
- 作者: エラスムス,沓掛良彦
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2014/01/23
- メディア: 文庫
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- 作者: 吉田武
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仕事場で岐阜新聞を読んでいて、井筒俊彦先生の全集が出ることを知った。とても買えないと思うので、是非図書館で購入して欲しいものだが。井筒先生はまだまだ充分に知られているとは云えないが、日本の歴史上の思想家で、十本の指に入る偉大な存在だと思う。自分もまだしっかり読み解けたわけではない。これからも再読し続けようと思っている。
井筒先生の思想は西洋哲学の問題意識(特に近代の)とは必ずしも一致しないので、西洋の哲学者たちと比較するのは無意味だが、先生にとって、ロジックの面から見た西洋哲学を扱うのは、易易たるものであった。とにかく、英仏独語などは、易しすぎて外国語とは思えないという人であり(三〇ヶ国語はできたと云われる)、デリダの(一般的には超難解と云われる)哲学などもすぐに把握して、これは認めた(デリダも井筒先生をリスペクトし続けた)くらいの人でもある。とにかく、西洋哲学の全領域に通じておられたが、メインの仕事はイスラーム思想であった。そして、仏教を始めとする東洋思想を(イスラームやスコラ哲学などと絡めつつ)独自に再構築する、晩年の日本語での著作。(先生の最後の仕事は大乗起信論についてであった。)これらこそが宝の山というものである。我々はその冨に感謝せねばならないだろう。