ナボコフ『ナボコフのロシア文学講義(下)』

曇。
イオンの写真屋。レンタル店。

ウラジーミル・ナボコフナボコフロシア文学講義(下)』読了。本書について何を言っても、盲蛇に怖じずということになるだろう。なにせナボコフは、最上級の文学通ということになっているのだから。文学音痴が何を言っても、自分の恥になるだけなので、ちょっとだけ蛇足を。やはりドストエフスキー全否定には驚かされる。ドストエフスキーは日本では昔から最高のリスペクトを受けてきた作家であるが、ナボコフドストエフスキーの粗野さが気に入らないらしい。逆にトルストイは絶賛。やはり褒めている文章の方がおもしろい。ナボコフの導きで緻密にトルストイを読み込んでみると、トルストイが無意識のうちに大変な技巧を用いていることがわかる。ナボコフによると、トルストイはある発見を(無意識に)したのだが、その発見というのは、「私たちの時の概念と非常に快適かつ正確に一致する生活描写の方法」(p.17)なのだそうである。これはナボコフの非凡な読みではあるまいか。まあ正直いってこれほど小説が緻密に読めるのは、ほんの一部分の読書家だけであろうが、それに付いていくと云うのは楽しいことである。


2013年春_62