ナボコフ『ナボコフの文学講義(下)』

雪が降っている。この冬いちばんの寒さ。
2012年秋・冬_22

ウラジーミル・ナボコフナボコフの文学講義(下)』読了。うーむ、正直言って上巻は少々退屈だったが、本巻は面白いではないか。それというのも、『ユリシーズ』こそ未読だが、あとの『ジキル博士とハイド氏の不思議な事件』も『スワン家のほうへ』も『変身』も既読であるせいなら、俺って単純だなあと思わざるを得ない。しかし、本書を読んで、それら既読作がさらに深く読み込めるようになったのかは、ちょっとわからない。細部が大切だというナボコフの文学観は理解できるし、思いがけない解釈も至るところにあるけれど、よい文学批評というのはそういうものなのだろうか。どうも、日本的な文芸評論観に慣れ過ぎているのか。それに、自分には、(それが面白いことはわかるのだが)引用があまりにも多すぎるような気がして仕方がない。細部を忘れていて、ああ、そういう話だったかなということはあるけれど、とにかくやたらと引用と粗筋の紹介が多くて、引用の冴えを楽しむような感覚にも乏しいように思える。いやもう、自分などがこういうことを云うのは、不遜で天に唾するものだとはわかっていますが。本書がつまらないと言っているわけではないのですよ、為念。

ナボコフの文学講義 下 (河出文庫)

ナボコフの文学講義 下 (河出文庫)


クリスチャン・フェラスの「シャコンヌ」。既に病的な飲酒癖に取り憑かれてからの録音らしいが、じつに心を動かされたので、ここに録する誘惑に抗しがたかった。バッハとしてはヴァイオリンの音が甘く美音すぎるとも感じられるかもしれないが、只々感動的である。何故か動画が二つに分けられているのだけが残念。