林光男『完全独習 量子力学』/佐藤文隆『相対論と宇宙論』

晴。
林光男『完全独習 量子力学』にざっと目を通す。副題「前期量子論からゲージ場の量子論まで」。ネットにも既に幾つかのレヴューが上がっているが、知識を整理するための本で、独習本ではないという評価は当っている。実際、記述は相当に簡潔であり、本書だけで量子力学を独習するのはまず無理だろう。すっきりしていて、そんなに悪い本ではないと思うが、自分のような素人で本書の題名に誘引される人もいると思うので、注意しておく。出版社は、題の付け方をもう少し考えて欲しかった。

完全独習量子力学 前期量子論からゲージ場の量子論まで (KS物理専門書)

完全独習量子力学 前期量子論からゲージ場の量子論まで (KS物理専門書)

佐藤文隆『相対論と宇宙論』にざっと目を通す。ざっと通読してみると、最初の印象よりも遥かにむずかしい。読者がかなり優秀なことを想定しているのか、本当に容赦ないのである。しかしユニークな本だな。普通の(?)相対論本とはまったくちがう。物理学をやりたい学生は、読んでみることを薦めたい。埋もれさせておくには勿体ない本だ。自由さに満ち溢れた本で、式の導出なども著者の血肉になった方法らしく、意外な導き方が多い(というのも、初学者にはむずかしい一因である)。完全に物理を消化した人が、自由自在に式を操っていくのを堪能してもらいたいと思う。
2013年春_47_01
夕方、お墓参り。

音楽を聴く。■ヘンデル組曲集(ペライア)。何故かヘンデルって滅多に聴かないのだが、いいではないか。リヒテルも正規録音を残しているから、これも聴いてみるか。グールドの唯一のチェンバロ演奏がヘンデルだったと思うので、これも聴き直してみよう。確かとても音が美しかったと覚えている。■シェーンベルクモーゼとアロンブーレーズ)。演奏に一時間半以上かかる大作。ドイツ語は単語くらいしかわからないので、聴いていて大変だった。この音楽が単一のセリーによるものだとは、驚異的な話である。晦渋な作品ではあるが、魅力も多いと感じた。シェーンベルクの創始した十二音音楽は、彼の手になるものは必ずしも干からびた、生気のないものではない。シェーンベルクに影響を受けた作曲家は多いが、スケールの点で彼を上回った者は結局いなかったのだと思う。ブーレーズの音楽づくりは極めて精緻。