吉田光邦『日本の職人』

晴。
吉田光邦『日本の職人』読了。五〇年代と七〇年代に、いわゆる「伝統工芸」に携わる、当時の職人たちをレポートしたもの。いずれも職人たちの手仕事の素晴らしさと、職人の衰退を記述している点では同じだが、五〇年代においては後継者不足が深刻であるのに対し、七〇年代の方では、若い人たちが後継者として現れるようになったことが書かれている。これ、本当なのだろうか。確かにテレビでも、子供が後を継いでくれますというような番組も見るけれど。ただ、オブジェやちょっとした気の利いた置物としての民具が、結構人気があるのはそうだろう。まあ、そうした話は本書とはあまり関係がなくて、脱線した。本書では職人の仕事の具体的な様子が、かなり細かく描かれているのが特徴だ。著者は理学部を出た、大学の先生なのだが、知識がしっかりとしている上に、フットワークも軽い。だいぶ以前の本だが、確かに文庫化する意義はあるように思えた。
 それから、付け加えておけば、以前読んだ『失われた手仕事の思想』にもあったが、現代の職人のむずかしいところに、仕事のための道具が手に入らなくなったことが挙げられる。結局、職人の使う道具は汎用性がないために、かつては村の鍛冶屋が工夫して造り、また修理したものだが、その村の鍛冶屋がなくなってきているためだ。今使っている道具が壊れたら終り、ということになっているようだった。現在ではこの問題、どうなっているのだろうか。ちなみに、ウチの近所(というほど近くないが、どう表現したものか)には、辛うじて村の鍛冶屋が残っているようだ。ただ、ウチでも昔は農具が壊れたとき、そこへ持っていって修理したらしいが、今ではそういうことはない。買い換えるだけである。結局、既成品を買っているだけだからだ。今ウチで使う農具くらいなら、それでも間に合うわけだが。本当に、日本の職人というのは、どうなってしまうのだろうか。

日本の職人 (講談社学術文庫)

日本の職人 (講談社学術文庫)


ブログを書かずに寝てしまったので、朝早く起きて書いている。あまり読書の調子がよくないなあ。