ギレリスのベートーヴェン・ソナタ集落手

ギレリスが弾く、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ集落手。まずいわゆる「選帝侯ソナタ変ホ長調WoO.47-1と、同ヘ短調WoO.47-2を聴いてみる。「選帝侯ソナタ」はベートーヴェン十三歳の時の作曲で、既に後年を予想せしむる閃きがところどころに聴かれる。この二曲では、特にヘ短調の作品が出来がいい。ピアニストのせいもあるだろうが、既に相当に聴かせる。作品番号付きのソナタには及ばないかも知れないが、他のピアニストももっと演奏したらいいのに。
 第二十六番「告別」は、これは技術的というより解釈のむずかしい曲だと思うが、繊細さとダイナミズムが同居した演奏になっている。なるほど、さすがだという感じ。第八番「悲愴」と第十四番「月光」も、夾雑物が洗い流された、新鮮な演奏。それにしても、ベートーヴェンソナタは何とも面白くって仕方がない。ギレリスはそれを実感させる。
 作品一〇の三曲。ソナタ第五番は、いくら何でもテンポが遅すぎる。この演奏に限っては、衰えを感じずにはいない。第六番は好きな曲で、溌溂とした演奏。ほぼ理想的ではないか。第七番も同様。

Beethoven Sonatas

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