大江健三郎『いかに木を殺すか』

晴。
大江健三郎『いかに木を殺すか』読了。相変わらず大江健三郎はエロい。本書に自分で書いているが、外国では「性と暴力」の作家として捉えられているとか。それが日本人らしく、じつに貧乏臭い印象を与えられるようなものだ。それから、出身地の四国の山奥だが、ちょっと理解しかねる作家の執着である。四国の山の中に、いったい何があるというのか。女教師が全裸で山の中を歩き回って何だというのか。これで頭がおかしいというわけでもなく? 母親の裸を見て勃起し射精って、げんなりさせられるが、本当にそうだったのか? そして作中には妹の裸に替えて描写し、そのことをさらにまた私小説風に書く。これが「文学」なのか。うーむ。確かに不透明ではある。問題は、この不透明さの先に何かあるのか、ということだ。いや、それはあるかもしれないが。


ベートーヴェン弦楽四重奏曲第八番(アルバン・ベルクQ、旧盤)を聴く。これはベートーヴェンの音楽の中でも、屈指の名曲だろう。彼の弦楽四重奏曲は質がとても高く、どれか一曲を挙げるなど不可能であるが、敢て云えば、これは個人的にいちばん好きな曲である。室内楽を聴き始めた頃から好きで、スメタナQのディスクでどれだけ聴いたかわからない。このアルバン・ベルクQの演奏もよく、曲の聞き所をほぼすべて表現しおおせてみせている。冒頭のどこか奇妙な主題から、何とも格好のいい展開を聞かせてくれる曲だ。緩徐楽章も最深。
ベートーヴェン : 弦楽四重奏曲第8番ホ短調&第11番

ベートーヴェン : 弦楽四重奏曲第8番ホ短調&第11番