ポリーニの一九九九年録音のショパン、バラード第一番を聴く。ポリーニというピアニストを評価するのはむずかしい。録音を聴く限りでは、ポリーニの演奏スタイルには、二度の切断点があるように思える。ひとつは七〇年代と八〇年代の間であり、もうひとつは、このバラート全曲を含むショパン・アルバムとそれ以前の間である。第一期は「完全主義者」といわれる徹底的にスタイリッシュな演奏であり、第二期は音色が曲ごとに多彩に変化し、スタイルも多少柔軟になった。そして第三期は、タッチがかなりやわらかくなり、「円熟した」といわれることが多い。このバラードは第三期のものだが、これの評価が自分の中で一定しない。軟弱で退屈な演奏だと感じる時もあれば、ショパンの天才をこの上なく表現した、最高の演奏だと感じるときもある。今の感想は後者で、ミケランジェリの演奏の後に聴いたのであるが、ミケランジェリのピアノがまるでトイ・ピアノのように聞こえるくらい、比較にならないスケールの大きさを感じた。おそらく気分が新鮮なときに、こう感じやすいのかと思う。ぎりぎりに煮詰まっている時は、聞いていられないこともあるのだが。
- アーティスト: ポリーニ(マウリチオ),ショパン
- 出版社/メーカー: ポリドール
- 発売日: 1999/10/14
- メディア: CD
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