大沼保昭『サハリン棄民』

雨。
大沼保昭『サハリン棄民』読了。太平洋戦争中、サハリンでの強制労働のため、多くの韓国・朝鮮人が「日本人」として連行された。戦後、サハリンに在住していた日本人は内地へ引き上げていったが、韓国・朝鮮人は既に「日本人」でないとして、サハリンに留まることを余儀なくされた。本書は、彼らをどうにかして祖国へ帰すべく運動を担ってきた中心人物によって、その歴史的経緯を綿密に記録したものである。本書を読んでいると、政治とは、外交とはどういうものかを嫌でも思い知らされる。そして、絶望的なまでに運動が進捗しないなかで、過去への「責任」を身に受け止める人たちが少しずつでもいるということに、感銘を受けざるを得なかった。素朴すぎる感想かもしれないが、政治は人間を翻弄するのであり、だからこそ、政治家の担っているものも大きいのだと思う。

サハリン棄民―戦後責任の点景 (中公新書)

サハリン棄民―戦後責任の点景 (中公新書)