ジェリー・ブロトン『はじめてわかるルネサンス』/中見真理『柳宗悦』

晴。
ジェリー・ブロトン『はじめてわかるルネサンス』読了。小冊子だが、現代的な観点からルネサンスを見ている。ここでは、ブルクハルト以来の美術・芸術中心のルネサンス像は(不当なまでに)一新されている。人間の開放というルネサンスの意義は忘れられてはいないが、経済的・政治的な側面が大いに強調されているのが目を引く。本書ではルネサンスの範囲は広く採られ、宗教改革や反(対抗)宗教改革大航海時代からシェイクスピアまでを含む。本書を読むと、とりわけ印刷技術の普及が世界を大きく変えたことが納得される。それはもちろん、聖書の印刷をとおして宗教改革を推し進めたし、また、地図(世界地図)の出版は、大航海時代へ進む歴史を後押ししたのだった。簡潔で印象深い、ルネサンス入門書だと云えようか。

はじめてわかる ルネサンス (ちくま学芸文庫)

はじめてわかる ルネサンス (ちくま学芸文庫)

中見真理柳宗悦』読了。柳宗悦のモノグラフィ。本書に拠れば、最近の柳研究では、柳に否定的なものが多いということで、意外だった。確かに柳の関わったことは、民芸運動にせよ朝鮮美術の評価にしろ、なかなかイデオロギー的に厄介な分野が多い。最初から危険な位置にいるので、立場によれば簡単に批判されてしまうのは納得できるが、残念な話である。柳宗悦は相当の人物ですよ。本書は、そこのところがよくわかるのが嬉しい。柳の思想がラディカルな平和思想に繋がりうることを指摘した本書の記述は、意表を突かれたし、創造的な指摘だと思った。研究者としては当り前かも知れないが、著者は何より柳をよく読み込んでいる。その辺が気持ちがいい。