岡野友彦『源氏と日本国王』/中井久夫『隣の病い』

曇。
レンタル店。
岡野友彦『源氏と日本国王』読了。「源氏長者」という語は初めて聞いた。本書は、武家政権の誕生に必要なのは「征夷大将軍」ではなく、この「源氏長者」という地位なのだ、という発想を基に書かれたものである。

源氏と日本国王 (講談社現代新書)

源氏と日本国王 (講談社現代新書)

中井久夫『隣の病い』読了。数少ない現代日本の真の知識人の本だから、悪かろう筈がない。厖大な読書と、しっかりした経験をバックボーンにした文章を読んでいると、眩暈すら覚えるほどだ。どの文章もすばらしいが、神戸を襲った震災の話と、現代ギリシャの詩人についての論考には、圧倒された。震災の時、九州大学の精神科に応援を頼むのがおもしろい。九大からは、「二時間後に送る」「一切の費用は自己負担でやる」「費用は君たちに心配かけない」と言ってきたのだという。恐らく即座に、ということであろう。九州人のメンタリティに賭けたのである。著者は「東京なら大会議を始めるのではないか」と思ってそうしたというのだが、実際そうだったというのが情けない。
隣の病い (ちくま学芸文庫)

隣の病い (ちくま学芸文庫)