出版不況について

仲俣暁生がよくそのブログに、最近の出版業のあり方や、その経営の厳しさについて書いていて蒙を啓かれるが、それによると、とにかく本や雑誌が売れないという。しかし、平凡な本好きから見ると、出版される本の数はあまりにも多い。新書などは呆れたもので、毎月信じられないほどの数が出るが、自分としては、その中で買いたいと思うものは殆どない。無尽蔵に本を買うためのお金があるわけでなし、一冊で七〇〇円ほどもする新書が新刊でそう買えるものでもなく、どうしても読みたいもの以外、BOOK OFFなどで安く買い叩いてやるのがふさわしい仕打ちだと思っている。出版社によっては、明らかに読者をなめた本の作り方をしているところがあって、そういうのは本好きにはわかるものだ。
 よくBOOK OFFなどの新古書店を謗る人がいるが、BOOK OFFでたくさん買う人は、まず大抵は、同じくらいの数の新刊書を買っているのではなかろうか。思うのだが、出版社は、本好きに向けて本を作るべきではないだろうか。身銭を切って、しかも数多く本を買うのは、そういう人たち(数は少ないかもしれないが)だ。そういうことになっていないので、結局読者も育たないのだと思う。今の日本の出版業界の様子を見ると、この「読者を育てる」ということが殆ど考えられていないようだ。樹を切り出すだけで山を荒れたまま放置していくような真似は、もういい加減止めなければ酷いことになる。そのうち、樹も育たなくなって、荒れ果てた国土が残るのみ、そんなことにならなければよいが。