東浩紀『テーマパーク化する地球』

晴。

午前中、甥っ子の勉強を見る。


夕方、ミスタードーナツ イオンモール各務原ショップ。エンゼルクリーム+ブレンドコーヒー399円。東さんの哲学的エッセイ集である『テーマパーク化する地球』をさらに読む。東さんは思想家なのではないかと僕は思っているのだが、本人は「批評家」と名乗ることが多い。で、本書を読んでいると、東さんが「批評」をどのように考えているのか、ほとんど執拗なまでに考察されている。そして、東さんの若い頃(?)とはちがって、それはかなりネガティブなのが印象的である。例えば、「批評=病院」説。ふつうの「健康な」人には批評は必要ないのだが、人生そんなうまくいくばかりでない。人生が深刻な事態に立ち至ったとき、そのある場合で文学や批評は必要になるという感じ。また、「批評=ゲーム」説。批評なんて何の意味もない、ゲームにすぎないけれども、観客は生む。そのことを考えるべきだという論。また、批評は自己嫌悪の瞬間に胚胎するという、興味深い「放言」もある。確かに、東さんはときどき「自己嫌悪」を表明するような文章を書かれる。とにかく、東さんは優秀すぎて、また資質もあるだろうが、すぐ議論を思いついてしまって、それで執拗に批評について批評的に語ってしまう。それはわたしには実際おもしろい。なぜ東さんはここまで反省的なのだろうと、つい興味がもたれてしまう。
 やはり批評を読むのはおもしろいし、刺激になるところがある。で、先日も書いたとおり、本書は「適度に読みやすく、適度に反発させられ、適度に考えさせられる」。それは日常の中に「句読点を打つ」ようにも思われるが、それはよくない読み方であろうか。そもそも、なぜ本を読むかということが、自分には決して答えられない問いである。僕は東さんのことはそれほど好きではないけれど、やはり読むのである。これだけ「成功している」人が自己嫌悪とか、それだけでもおもしろい。下らない読み方だったらすみませんというところだ。

テーマパーク化する地球 (ゲンロン叢書)

テーマパーク化する地球 (ゲンロン叢書)

いずれにせよ、東さんはアカデミズムの人ではない。わたしは、アカデミズムの優秀な人はどちらかというと苦手である。

一方で、東さんには若い頃から、批評は(一定多数の)読者をもたねばならないという信念もあることは確かだ。柄谷行人や浅田さんの『批評空間』の行き方は、あれが多数の読者をもち得ないということで否定される。

それから、東さんには過去の自分の仕事に関する言及が際立って多い(つまり反省的である)。これはこの人の特徴だと思う。たぶん、自分は適切に読まれていないという思いが強いのでもあろう。また、ある世代以降の批評家として「ひとり勝ち」であったという事情も反映していそうである。

東浩紀『テーマパーク化する地球』読了。いま読んでいた中に、こんな文章があった。「大衆の『民意』がそのまま政治を動かし始めたら、世界はヘイトと暴力ばかりになるに決まっている。」(p.289)これが東さんの「大衆」の把握である。そして、この文章はいま現実化していることだとわたしは思う。
 それから、最終章の、東さんがゲンロンの代表を辞めた話。なるほどなと思った。
 本書とは直接関係がないが、東さんは「地方」というものがまったくわかっていない、東京の人だと思う。そして、東京の人が地方のことを全然わかっていないのは、別に東さんに限らない。「日本=東京」というのはずっと以前からそうだが、地方は衰退し東京のみが人口と金を吸い上げていき、地方が「滅びる」のはこのままだと不可避である(というか、ある意味では既に「滅びて」いる)。地方はなんとか「地方=小東京」への道を推し進めるしかないだろうし、それによってさらに衰退するであろう。そんなことを言っているわたしも、地方のイオンモール(=小東京)に日参している始末である。

NML で音楽を聴く。■ベートーヴェンの「アンダンテ・ファヴォリ」 WoO57、ピアノ・ソナタ第二十二番 op.54 で、ピアノはダヴィデ・カバッシ(NMLCD)。なかなかおもしろい。■モーツァルトのピアノ・ソナタ第十番 K.330 で、ピアノは片山敬子(NMLCD)。スマートさからは対極にある演奏。わたしはこれほど大きな射程はもっていないので、少ししんどかったくらいである。ピアニストは長年の研鑽で、ここまで達したものであろうか。だとすれば、齢を取るということもポジティブなものであろう。■ショスタコーヴィチ弦楽四重奏曲第八番 op.110 で、演奏はメディチ弦楽四重奏団NMLCD)。■ショーソン弦楽四重奏曲 op.35 で、演奏はアテネウム・エネクス四重奏団(NML)。ショーソンはじつに変った作曲家で、僕は以前から好きだと言っているのであるが、この曲はたぶん初めて聴いたという。一聴してみて、やはり変っていて、ふしぎな領域を接続しているなという感じ。他に代えがたい作曲家だな。

Quatuor a Cordes Op.35

Quatuor a Cordes Op.35

ブリテンの「イリュミナシオン」 op.18 で、ソプラノはクリスティアーヌ・エダ=ピエール、指揮はジャン=ワルター・オードリ、アンサンブル・ジャン=ワルター・オードリ(NML)。
Illuminations Pour

Illuminations Pour