双線形形式を表す行列

双線形形式を表す行列を考えよう。
C=(cij) を体Kにおける n×n 行列とする。このCに、次のような双線形写像n×Kn→Knを対応させることができる。すなわち、Knの列ベクトルをX,Yとするとき、tX=(x1,…,xn), tY=(y1,…,yn) を2つのベクトルとすると、これらに1×1行列 tXCY(これをKの元と見倣す)を対応させるのである。すなわち、写像
   
を考えると、これは行列の計算手順より、明らかに双線形写像となる。この写像は、例えば
   
と書くことができる。
 行列Cに対応するKn上の双線形写像を、g(C) と書く。すると、明らかに g(C+C')=g(C)+g(C') であり、また b∈Kに関し、g(bC)=bg(C) となる。このことは、写像 が、Kの n×n 行列のベクトル空間からKnの双線形形式の空間への、線形写像であることを示している。
 双線形写像 g(C) は、Cが零行列のときに限って零写像である。このことより、g(C)=g(C') ならば、C=C' となる。


∨を体K上のベクトル空間とし、双線形写像 g:∨×∨→K を考える。∨の基底を {v1,…,vn} とすると、∨の元 v,w をこの基底によって
   v=x1v1+…+xnvn
   w=y1v1+…+ynvn
と書くことができる。したがって、g の双線形(参照)より
   
だから、 と置くと、これは上のような行列Cであり、
   
と書き直せる。
 順序が逆になるが、形式 g は対称であると仮定しよう。基底 {v1,…,vn} が直交基底ならば、 であるから、行列 (cij) は対角行列
     
の形になる。このとき、この双線形形式は「対角化された」という。この場合、スカラー積はより簡単に
   
と書ける。さらに基底が正規直交基底(すなわち )ならば、
   
は単なるドット積となる。