三枝充悳『大乗とは何か』

雨。のち曇。
音楽を聴く。■バッハ:ハープシコード協奏曲第三番 BWV1054、第四番 BWV1055(キプニス、マリナー、参照)。■ハイドン:ピアノ・トリオ ロ長調 Hob.XV-8、イ長調 Hob.XV-9 (トリオ1790、参照)。■シューベルト:ピアノ・ソナタ第十四番 D784 (ピリス、参照)。第一楽章第二主題が出てきたときには心臓が止まるかと思った。何という音楽。この曲、全体としてはむしろ空疎と評されても仕方がないような、アンバランスな曲である。それだけに、この部分だけ異様に美しい。第一楽章をじっくり聴いてみると、この第二主題の展開はまったく不十分であろう。しかし、シューベルトは手の付けようがなかったにちがいない。もともと展開の苦手なシューベルトであるし。ピリスは見事な演奏。一流ピアニストに、「超」の一字を頭に付けたくなるような演奏ぶりである。この曲でこんな気分になったのは、この演奏が初めて。さて、この曲、リヒテルあたりは録音していないものであろうか。■シューマン:幻想曲 op.17 (ホアキン・アチューカロ)。拷問。シューマンという人は体育会系とは何の関係もない人である。そしてこんなに楽天的で健康でもなく、もっと不健康な、内面的なロマンティシズムに満ちた作曲家だ。それにしても、多くの超一流ピアニストらの名演が残っているこの曲のような音楽を録音するというのは、なかなかむずかしいものだ。それらを一々聴いていては、並の神経では到底録音する勇気など出ないだろう。まったく勇気に満ちた試みである。

シューマン : ピアノ作品集 (Schumann : Fantaisie Op.17 | Kreisleriana Op.16 / Joaquin Achucarro) [日本語解説書付] [輸入盤]

シューマン : ピアノ作品集 (Schumann : Fantaisie Op.17 | Kreisleriana Op.16 / Joaquin Achucarro) [日本語解説書付] [輸入盤]


三枝充悳『大乗とは何か』読了。体系的な本ではなくて、色んな文章をまとめたごった煮である。勉強にはなるけれども、一種の仏教史の本で、それ以上を本書に求めてはならない。文献学的、語源学的研究を求めておられる方はどうぞ。大塚英志を読む。