昭和11年昭森社刊『左川ちか詩集』

晴。
音楽を聴く。■モーツァルト:ピアノ協奏曲第十二番 K.414(ペライア参照)。■ハイドン:ピアノ・トリオ ヘ長調 Hob.XV:6、ニ長調 Hob.XV-7 (トリオ1790)。フォルテピアノのペコペコした響きは何とかならないかと思うが、曲はとてもおもしろい。ベートーヴェンを用意したのがまさしくハイドンだということが納得される。

Complete Piano Trios (vol. 1)

Complete Piano Trios (vol. 1)

ミハイル・プレトニョフ:Fantasia elvetica(マルタ・アルゲリッチ、アレクサンドル・モギレフスキー、ミハイル・プレトニョフ参照)。作曲者のプレトニョフはもちろん、ピアニストとして高名なあのプレトニョフだろうな。曲はロシア音楽(チャイコフスキーラフマニノフなど)の伝統をベースにした調性音楽で、色いろごった煮でおもしろい。傑作かどうかは知らないが、少なくとも自分には得るところが多かった。二台のピアノは打楽器的な使われ方をしているので、特にアルゲリッチでなければいけないことはないけれど、それでもやはりアルゲリッチらしいところは聴かれる。なかなか強度もあって、結構しんどかったです。もし何なら聴いて損はないと思う。

今日から週二回のアルバイト。以前教えていた高校生を二人見ることになった。
図書館から借りてきた、『左川ちか詩集』読了。これは驚いた。先日、大岡信の『昭和詩史』でその名を知って、予感がしたので県図書館で検索したところ、昭和11年昭森社刊の詩集が書庫にあったので読んでみたのだが、よくもまあ県図書館に存在して読めたものである。左川ちかは明治44年北海道生まれ。胃癌により24歳で死去。詩集は死後の刊行である。最初に「驚いた」と書いたが、本当に驚いた。モダンな湿度の低い詩であるが、単に観念的であるとは云えない。鉱物の比喩を用いれば、硬質というよりはやわらかさのある宝石であろう。そう、ダイヤモンドよりは、瑪瑙。まあ自分などがこういう比喩を用いるのはもうやめておくが、魅力的な詩たちであった。それにしても、澁澤龍彦あたりが、左川ちかの詩についてどこかで言及していないものであろうか。文学のわからない自分の云うことであるけれど、現在高名な詩人でもこれよりつまらない類はゴロゴロしていると判断する。これほどでも歴史に埋もれてしまうものなのか。どこかの文庫本に入ってもバチは当たらない(??)と思うのだが。しかし戦前の350部限定本がどういう経緯で岐阜県図書館に入ったのか。まったく不思議である。
 なお、本書はアマゾンには当然の如く登録されていない。詩人について、Wikipedia には多少の記載がある。
 広大といわれるネットの世界だが、左川ちかに関する言及はそれほど見つからない。オフィシャルなものとしては、小樽市(詩人の生誕地)の HP に多少の記載がある(参照)。あとは、目ぼしいものとしては次のブログ記事であろうか。
  ■ - しっぷ・あほうい!
これは自分などが云うのは気が引けるが、左川ちかと古賀春江を関連させて書かれた、非常にセンスの高いもので、さすがに世間には具眼の士がおられるものよと感嘆させられた。ここにもあるとおり(Wikipedia にも記載があるが)、1983年に森開社から『左川ちか全詩集』が出ているようである。だから、細細とではあろうが読まれてはいるのだ。
 さて、こういうのを調べているとマニアの存在に気がつくが、僕はマニアという人たちには何にせよあまり興味がない。まだオタクの方がマシである。ただ、こういう人たちのおかげで生き延びていくものもあるので、貴重で大切な人たちではあるのだけれど。