國分功一郎『近代政治哲学』

晴。夜雨。
國分功一郎『近代政治哲学』読了。とても大きな題であるが、本書はいい出来でじつにおもしろかった。自分のような初学者向けで、政治哲学のおもしろさと重要性を味あわせてくれる、なかなか得がたい本である。明快でわかりやすいけれど、それはパースペクティブの取り方が上手いためで、決して単純な本ではない。自分は正直言って政治哲学は苦手だったのだが、こんなに刺激的なものだったとは知らなかった。例えば、ルソーの「一般意志」を「法」と読み替えてみること。民主制を否定したカントにおいて、民主主義を考えてみること。また、本書での「自然状態」(このタームの政治哲学における重要性は周知であろう)なる概念の闡明は、見事なものではないだろうか。個人的なことを云えば、「無一物」の人間を服従させることのむずかしさを、本書は気づかせてくれた。このことは、国家の統制がますます強まっていくであろう現代において、自由の可能性を示唆してくれるかも知れない。云々。