片岡義男『星の数ほど』

晴。久しぶりに空気がさらっとしている。
片岡義男『星の数ほど』読了。短篇集。片岡義男は初めて読む。僕が中高生くらいだった頃、片岡義男は角川文庫に大量に入って、ある短篇は映画にもなった。じつは二本立てか何かの一本で、それを見た記憶があるのだが、今となってはよく覚えていない。小説はどうもこっ恥ずかしいラブ・ストーリーものだろうという印象があったので、読まなかったわけだが、この頃信用すべき読み手たちが推奨しているのをあちこちで見て、権威主義的に「ブ」で購入したのである。
 実際に読んでみると、印象は予想どおりだったというのが半分、裏切られたのが半分だった。恥ずかしい、オシャレっぽい短篇もあるし、落ちがハッとさせられるのもあった。そして、本書がゆるやかな連作短編集になっている仕掛けは、なかなかよかった。お互いに関係のない男女それぞれの連作が、最後に合流するというものであり、まずまず成功していると思う。まあ、自分の趣味にかなうような小説ではなかったが、悪くはなかった。さて、別の作品は読むのか、どうか。
 付け加えておけば、文章は無味無臭の水のようなもので、さらさらと読めはする。村上春樹にも似た軽さがあるかなと思った。セックスの周りを旋回しているのだが、女二人で旅館に泊まってもレスボスの愛に至らないし、男が二人の若い女を家に入れつつ、何もなかったりと、えげつない描写は徹底して避けられている。大人の男女関係なのだから、そこらあたりが、不自然といえば不自然。

星の数ほど (角川文庫)

星の数ほど (角川文庫)


音楽を聴く。■モーツァルト:幻想曲K.397, K.396(アファナシエフ)。■モーツァルト:幻想曲とフーガK.394(グールド)。■ティーレマンポリーニブラームスは、指揮もピアノも、本当に何度聴いてもわからない。どこがいいのだろう。今回もつまらなくて、途中で聴くのを止めた。こちらがどうかしているのか。