吉本隆明『開店休業』/ホッケ『マグナ・グラエキア』

晴。
図書館から借りてきた、吉本隆明、ハルノ宵子『開店休業』読了。吉本隆明最晩年の、食に関するエッセイ集。これはその頃の吉本氏に多かった、聞き書きという形のものではなく、書かれたものであるという。全篇に、吉本氏長女のハルノ宵子氏によるコメントが附されていて、これもまた読ませる。吉本氏の記述は淡々と思い出を語ったもので、何も知らずに読んでも面白いと思うが、氏の文業に接してきた者には、いっそう感慨深いのも確かだ。最後の方は氏の記憶が混濁しているところもあり、痛ましくはあるが、やはり書いて頂いてよかったと思う。本当に、こんな思想家がどれくらいいるだろう。一ファンの、贔屓の引き倒しだろうか。ちなみに、吉本氏の「最後の晩餐」は、カップラーメンの「きつねどん兵衛」だったという。そんな些細なエピソードにも、ファンは特別な感慨を抱いてしまうのだ。

開店休業

開店休業

グスタフ・ルネ・ホッケ『マグナ・グラエキア』読了。マグナ・グラエキアとは今のイタリア南部のことを指し、古代ギリシアのポリスの植民地の謂である。それは、本国よりも栄えた時期があったほどで、ピタゴラスはここで活躍したし、プラトン哲人政治を現実化するため、ここへと旅立った。本書は「マニエリスム」という言葉を流行らせたホッケの書の、種村季弘による翻訳である。ホッケの若い頃の南部イタリア周遊紀行を、後年になってリライトしたものだ。旅行記ではあるが、小説を読んでいるような感覚を覚える。土地の様々な人たちと交わりながら、常にマグナ・グラエキアが幻視されているとでも云おうか。自分にはわからない細部がたくさんあったが、本書を読む妨げにはならなかった。著者に拠れば、南部イタリアでは今でも、言葉の中に古代ギリシア語が生きているという。何とも不思議な感じがする。
マグナ・グラエキア (平凡社ライブラリー)

マグナ・グラエキア (平凡社ライブラリー)


音楽を聴く。■シューマンクライスレリアーナop.16(ペライア)。ゴツゴツしているが、充分聴くに値するシューマン。■ショパン:ピアノ協奏曲第一番op.11(ペライア、メータ)。恥ずかしながら、おっさんになってもこの砂糖菓子のように甘い曲が好きだ。第一楽章の胸が苦しくなるようなロマンティシズム、終楽章の溌溂とした、飛び跳ねるような若さ。作曲当時、ショパンはまだ二〇歳前後だった。紋切型だが、天才という他ない。

まったく中国は何を考えているのか。コンプレックスの塊? 「中国はガス田開発を断固として続ける、日本は今の国力でどう対応するのか、腕前を拝見しよう―中国紙」
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130719-00000025-xinhua-cn