ヴィトゲンシュタイン『反哲学的断章』/カール・シュミット『政治思想論集』/古市憲寿『僕たちの前途』

晴。花粉症がひどくて、目が痒い。
図書館から借りてきた、ルートヴィヒ・ヴィトゲンシュタイン『反哲学的断章』読了。丘沢静也訳。ウィトゲンシュタインは、むずかしいところで楽に息をしていて、やさしいところを攻めるのに難渋しているように見える。じつに奇妙だ。
 ウィトゲンシュタインは音楽が好きなようだが、そのコメントが面白い。ブラームスを異様に過大評価し、ブルックナーシューベルトを好み、メンデルスゾーンを過小評価し、マーラーを無価値だと断じる。意外な感じもするし、よくわかるような気もする。
 ところどころに、変な断章が混じっている。「ファイリングキャビネットの適当な場所に、新しい引き出しをひとつつけると、信じられないほど便利だ」って何?思わず笑ってしまう。

反哲学的断章―文化と価値

反哲学的断章―文化と価値

カール・シュミット『政治思想論集』読了。ナチスとの関係で、「危険な思想家」とされるシュミットであるが、その「危険さ」は、それゆえばかりでもあるまい。難解な彼の論文は、それでもとても魅力的なものを多く秘めている。彼の政治思想では、個人の力が相当に大きいのだ。彼にとっては、政治は技術に還元できない。人間というものが、常に問題になる。
 文庫解説には教えられるところが多かった。とにかく、シュミットは、もっと文庫になってもいい、重要な思想家ではあるまいか。
 ところで、本書の内容とはまったく関係ないが、本文庫の無意味に上質な紙は、これはどうしたことなのだろう。カラー図版が収められているわけでもないのに。値段の高い文庫なのだから、こんなところに凝らずに、安くしてくれると有難いのだけれども。
政治思想論集 (ちくま学芸文庫)

政治思想論集 (ちくま学芸文庫)

図書館から借りてきた、古市憲寿『僕たちの前途』読了。著者は、『絶望の国の幸福な若者たち』が話題になった現役大学院生で、仲間と会社を立ち上げたりもしている。本書はその経験を元に、著者の周りの若き「起業家」を描く部分と、「起業家」論の組み合わせで出来ている。なかなか面白く、今の若い優秀な人が何を考えているかという点で、勉強になった。今の若い人は、結局仲間とワイワイやるのが一番幸福だということがわかる本でもある。億という金額を稼ぐ若き起業家も、仲間との時間を一番大切にするのだ。なるほど、と思わせられる。これは決して間違った人生の過ごし方ではない。ただ、個人的に、自分にはあまり関係のない世界だなとも思った。これは自分が変なのであろうが。
僕たちの前途

僕たちの前途


音楽を聴く。■モーツァルト:ピアノ・ソナタ第二番、第三番(バレンボイム)。バレンボイムは、必ずしも技巧家ではないな。感性が見事なタイプの音楽家