ル・クレジオ『大洪水』/河合隼雄

曇時々雨。夜、強い雨
ル・クレジオ『大洪水』読了。意味があるのかないのか判らないような文章を次々と読んでいると、次第に廃墟のような荒んだイメージが浮かんでくる。現代の西洋の到達点は、このような廃墟にあるのかも知れない。特にプロローグとエピローグの非・意味さは、よくこのようなものを書いたな、と思わせる力技だ。しかし、第七章冒頭の日の出の描写は、とても美しかったりする。それから、望月芳郎の訳文は、たいへんダンディで端整なものだと指摘しておこう。(ル・クレジオは二〇〇八年、ノーベル文学賞を受賞した。)

大洪水 (河出文庫)

大洪水 (河出文庫)

河合隼雄ユング心理学入門』読了。岩波現代文庫の<心理療法>コレクションの第一巻。著者の初期の著作であるが、著者の姿勢はこの頃から基本的にブレはない。著者は日本へのユングの紹介者だが、著者の巧みな紹介により、日本におけるユングは、うまく市民権が得られたのではないだろうか。実際本書を読んでいると、フロイトよりユングの方が経験的な学問であるかのように思われてくるから不思議だ(欧米だとユングはオカルト扱いだと思う)。どこかで読んだのだが、著者はユングを英訳で読むという。ユングのドイツ語はたいへん「きつい」ものらしく、読んでいられないというのだ。何となくわかるような気がする。ユングはいかにも狷介そうな人だから。
ユング心理学入門―“心理療法”コレクション〈1〉 (岩波現代文庫)

ユング心理学入門―“心理療法”コレクション〈1〉 (岩波現代文庫)