夜は雨が降ったみたいだ、いまにも降りそうな曇天。
辺見庸さんがブログで現代を「〝倫理〟が完全消滅した時代」といっていたけれど、よくわかる。わたしも、いま「まとも」がなにか、わからない感じがする。
仮に、東京じゃなくて、地方だったら、田舎だったら大丈夫、では、全然ないと田舎者(=わたし)は思う。地方はいまや東京の劣化コピーにすぎないしね。東京も腐っているけれど、田舎も同じだ。一見そうでないように見えたとしても。特に、いまはネットがあるしな。
午前中はぼーっとしていた。
昼から雨。
カルコスへ行く。なんと、7.29 以来だ、今年5回目か、じつに本屋へいかなくなったものである(アマゾンでも買わない)。
東浩紀さんの新刊『平和と愚かさ』を買おうと思ってのことである。きっとカルコスに入っているだろうと哲学の棚を見たが、どうもなさそうだ。どこか、別の棚にあるのかなと、まずは文庫化された中沢さんの『増補新版 古代から来た未来人 折口信夫』を手に取る。親本はちくまプリマー新書で、2008年に刊行された。今回ちくま文庫で再刊されるにあたり、新たに二篇を増補したというので、購入したのである。そういや中沢さんの新刊、3.15の『0の裏側: 数学と非数学のあいだ』以来、出ていないな。
ほぼ半年ぶりの本屋なので、いろいろ棚を見るが、買いたいものはない、というか、買う気が起きない。いろいろ読みたい本はあるのだが、わたしの精神が硬直化して、たぶん読めない本がほとんどだと思うので、触手が伸びないのだ。じつに、棚にクソみたいな本しか並んでないなと思う、硬直ぶりである(いっておくが、カルコスはいい本屋です)。
中沢さんの本をレジに出して、貯まったポイントを訊いたら3000円分以上あるというので(もう何年もポイントを使っていなかった)、文庫本はそれで買う。
ついでに、『平和と愚かさ』の在庫を調べてもらったら、どうやら店内にないようである。誰かが買ったのか、そもそも入荷しなかったのか。「お取り寄せになりますが」と申し訳なさそうにいわれたので、「いいですよ、取り寄せて下さい」という。気まぐれだ。ゲンロンはどういうわけか入荷の遅くなる出版社らしく、年が明けてからになるかも知れないですとまた申し訳なさそうにいわれたので、別にいいですよという。ほんと、気まぐれだ。アマゾンで買えば、あさってには届くらしいが。
椅子から立ち上がるときにヨロつく。外は陰鬱な雨だ。そういや、さっきパトカーがそのへんにいたなと思う。

雨の中の南天、12.21 に撮ったもの。
亜月ねね『みいちゃんと山田さん』第5巻を読む。承前。あいかわらず抉(えぐ)ってるな。山田さんが見かねて、みいちゃんと同居し出すんだな。それは、山田さんの「心の解放」にもなっていて、山田さんはキャバクラを辞め、大学もきちんと通い出す。たぶんみいちゃんが初めての友だちみたいだ。
みいちゃんは「知的障害」なのか、「境界知能」なのか、知らないが、こういう「感覚(知的にだけじゃなくて、痛覚とかも)が生まれつきニブい人」って、これほどまでの人は、わたしのこれまでの人生で、たぶん会ったことがない。みいちゃんはデリヘルで「完全NGナシ」で、身体を傷つけられたり、うんこを食べさせられたりしても、それがどういうことか、よくわかっていない。山田さんは、それは「そういうことを教えてくれる人がこれまでいなかったせいだ」と思って、同居していろいろ教えてあげようとするのだが、はたして、それはうまくいくんだろうか。
また、そういうみいちゃんみたいな人を、喰いものにする人たちがいる。彼らはよく頭が回る、つまり知能が高いんだが、良心のかけらもなく、さて、まともな人間といえるんだろうか。
そして、結局誰に、みいちゃんは殺されてしまうのか。それっぽい人が、すでに何人か登場している。
中沢新一『増補新版 古代から来た未来人 折口信夫』(文庫版2025)一気に読了。中沢さんを読んでいると、自分のようなニセモノに何ができるだろうと、思わずにはいない。現代の精神、いや、とりわけわたし自身が、空疎でカラッポであることを痛感する。こんなことではいけないが、さて、どうしたらいいんだろう。
それこそ、柳田、折口、南方なんかを、(いまさら)読んだらいいんだろうか。でも、わたしごときの能力では、どうしようもないのを予感する。
ひさしぶりに、手ごたえのある、自分が全力を出してもまったく追いつけない、読書をしたなと思う。こんな読書が、個人的に、きわめて稀になってしまった。
まさにわたしたちは追い詰められている。いまや、本気で「魂」などといったら、嘲笑されてしまうだろう。もはや、精神の合理化は極限にまで至ろうとしている。呼吸するのが、苦しい。
夜。
●東浩紀「家庭はそれぞれ」 #東浩紀 #切り抜き | YouTube
●「感情」と「論理」 #東浩紀 #切り抜き | YouTube
●人を動かす言葉は正しさとは別のところにある #哲学 #人生 #雑談 #ゲンロン #東浩紀 | YouTube
さすがやな。東さん、めっちゃマトモやん。
『ダンジョン飯』第4話まで観る。うん、おもしろいな。名作の匂いがぷんぷんするぜ。笑いがあるし、ちょっといい話とかもあって、よく出来ている。特に残念な女エルフが、いつも笑わせてくれるよ。
