田中東子『オタク文化とフェミニズム』

曇。
コロナ罹患での「口のまずさ」みたいなのからは、ほぼ回復したかな。おいしく食事ができるようになったのは、とてもありがたいことである。
 
NML で音楽を聴く。■モーツァルトのピアノ協奏曲第十九番 K.459 で、ピアノはクシシュトフ・ヤブウォンスキ、指揮はヴォルフガング・ゲンネンヴァイン、ルートヴィヒスブルク音楽祭管弦楽団NML)。クシシュトフ・ヤブウォンスキ(1965-、現在60歳)は現代のポーランドを代表するピアニストのひとり(ポーランドのピアニストといえばクリスティアン・ツィマーマンが有名だが、それに続く世代という)、わたしは知らなかった。検索してインタビューを読んだのだが、立派な内容で感心した(何様)。ほんと、世の中にはいろんな音楽家がいるものだな。
 フルートとハープのための協奏曲 K.299 も聴く。フルートはロベルト・ドーン、ハープはマルギット=アナ・シュース。これでアルバム一枚を聴き終えた。悪くなかった。
 しかし、こういうのが悪くないと思うわたしは平凡な人間、平凡中の平凡だな、と思う。必ずしも悪い意味でいうんじゃないぜ。

 
スーパー。鯵(アジ)を開いたのが安かったので、シンプルにフライにする予定。ナツメ球っていまでもあるのかと思ったが、ちゃんと売っていた。
 
オレが正解をもっているのに、オレのいうとおりにしないから、日本は終わってるんだ、みたいなことを、誰もかれもがいっているなあ。まったく、かしこい奴らばかりで、うんざりするぜ。わたくしもそういうところに陥らないようにしないとな。
 

ツユクサ、9.30 に撮ったもの。
 
昼。
“アイヌ民族への差別”と批判の声「事実を歪曲している」札幌の地下歩行空間に展示されたパネル展をめぐる騒動 なぜ差別を禁じる法律がありながら許可されたのか? 札幌市(HBCニュース) - YouTube
 
ガザ支援船団を拿捕したイスラエル軍、甲板に座るグレタさんの動画公開(ロイター) - YouTube
日本でどれくらい話題になっているか知らないが、グレタさんらが乗っている船団をイスラエル軍が拿捕したことは、(わたしにとっては)意外なことに、世界でかなりの反響を呼んでいるな。わたしがニュースで見たのはマレーシア市民の抗議で、クアラルンプールで大きいデモになっていた。
 また、反ユダヤ主義が強くなっている。イギリスではシナゴーグに対してテロが発生し、ユダヤ教徒二人が殺害された。きれいごとと思われるかも知れないが、憎しみに対して暴力で応酬するのは、「敵」の過ちに自分も陥るだけのことである。確かに憎しみに対して「まともさ」をもって対応するのは容易でないし、そもそも現代で、何が「まとも」なのか、我々はわからなくなってしまっているが。
 ナイーブなことを何度もいうが、ほんと、あらゆるレヴェルで、他人とただ仲よくほがらかにやっていくだけのことが、我々には超むずかしいのだ。
 
なお、「イギリスではシナゴーグに対してテロが発生し、ユダヤ教徒二人が殺害された」というのを検索したら、AI はそれを「誤り」と断定し、2018年のアメリカ、ピッツバーグでの事件を提示した。わたしの知るかぎり、わたしが記した内容は誤りではない。
英マンチェスターのユダヤ教会堂で襲撃、2人と容疑者が死亡 ユダヤ教の祭日 - BBCニュース
 
お八つにマロン大福Premium を食う。秋の味だなあ。
 

 
田中東子『オタク文化フェミニズム』(2024)を読み始める。なんとなく、男のオタクの「美少女愛」とか「萌え」とかを、フェミニズムで一刀両断、みたいな本を予想していたのだが、全然ちがった笑。じゃなくて、女のオタクがたまたま(?)フェミニストで、彼女がじつは資本主義批判を展開している本だった。
 いや、マジでびびった、またオレ、勉強不足を痛感したわ。本書は、「推し」や「推し活」が、じつは背後で「資本」にいいように取り込まれていることを、これでもかと、指摘しまくり、考察している。なぜ、『日経』はこれほどまでに「推し活」の記事を載せるのか。
 「推し」も「推し活」も、やりがいや、「推し」を押し上げたいという気持ちを見透かされて、(古い言葉でいうと)「資本家」の思うまま「搾取」されているのである。なにせ、オタク自身の分析だから(?)、説得力がある。自分のまわりのオタクたちが、いかに「推し」に時間とお金と労力を注ぎ込んでいるか。それは世間一般では「よいこと」と捉えられているが、一方では、まぎれもない、「搾取」にもなっている。だから、「推し活」に疲れたりするのである。
 「推し」「推し活」は、新自由主義ネオリベ)の言葉とじつに相性がいいのだ。マーケティングに取り込まれ、操作されている。ゆえに、資本主義批判の言説によって、おもしろいほど有効に切れてしまう。古典的な、マルクスの言葉(例えば「搾取」)すら、よく当て嵌まる。それなのに、「推し活」というのは、現代を生きていく上で必須、とすら思われ、好意的に扱われている。その背後で、「資本」が罠を張っていることは、なかなか指摘されない。
 「推し」、例えばアイドルは、ひどい条件で働かされても、それを公にすることなどできない。アイドルと労働基準法の問題は、まだ本格的に研究されたことがないそうである。いわば、アイドルに「人権」はない。
 
図書館から借りてきた、田中東子『オタク文化フェミニズム』読了。めちゃめちゃおもしろかった。後半は抽象度が下がってきて、つまり著者の本音(と思われるもの)がかなり出ていて、それはそれでおもしろかった。フェミニストらしく、(わたしのような)古くさいゴミみたいな男どもに対する、きびしい批判もある。それでも、本書は正直というか、率直というか、ごまかさないというか、おもしろかったといいたい。
 まあ、わたしのように不勉強な人間はいろいろいう資格がないと思うのだが、著者が、自分の「女オタクによる男性消費」を少しうしろめたく思いながら、「男性は女性を消費することに、戸惑いを覚えることはないのだろうか?」(p.238)と、素朴で真摯な問いかけがなされていて、心に残った。これ、(それこそ、女性を消費する)男性として、どう応えたらよいのか。
 たぶん、「男性一般」として、応えてはいけない気がする。確かにわたし個人は女性(のイメージ)を「消費」する(つまり性欲の対象とする)、クソ男だが、さて……。それは、自分の男性としての「性欲」を語ることになるから、ちょっとここでは言えない、というのが逃げになるかな。たぶん、女性が聞いたら「やっぱり男はクソだ」といわれるようなことしか、いえないような気がする(これまでフェミニズムから散々批判されてきた身勝手な「不正義」をいうことになると思う)。でも、これはあくまでもわたし個人のことであり、男性一般に普遍的に当て嵌まるとはいえない。女性からして、(女性のイメージを性欲の対象としない)すばらしい男性も、世の中にたくさんいる、と思う。
 ただ、わたしは、女性を「性欲」のみで見ているわけではない。それも、いえるんじゃないかな、自分にアマいといわれるかも知れないが。

なお、「見る(=男性)/見られる(=女性)」という古い構図が、いまは崩れ、女が「見る」側で、男が「見られる」側にくる逆転(例えば「イケメン男性アイドル」の存在とか)も当たり前になった現代ということが本書で何度かいわれていた。男にせよ女にせよ、「見る」側の攻撃性と、「見られる」側の被・攻撃性は、必ずあると思う。ゆえに、女性が「見る」側にふつうに立つというのは、現在、一種の「暴力」をふるうことを、女性も公認されたということだと思う。
 

 
夜。
『永久のユウグレ』第1話を観る。第0話に引き続き、これは先が楽しみ。(戦闘?)アンドロイドのユウグレが、200年前の恋人のトワサそっくりで、で、主人公を助けたあと、結婚して下さい、だって? 世界は廃墟になり、十八世紀半ばくらいの文明レヴェルに退行していて、もう、国家も、(男女二人の)婚姻制度もない。ユウグレは、明らかに主人公のことも、「西暦」の世界のことも知っている。
 めっちゃおもしろそうじゃん、2クールでじっくりやってくれないかな。P.A.WORKS だから作画もすばらしい、今回は、ユウグレの戦闘シーンが美しかったな。
 
SNSの「女性叩き」が急増、なぜ? / イギリス政府の対策がすごい / インセル文化とマノスフィア / コロナ禍での変化 / ネットのない時代に戻りたい若者 / 女性政治家(ハフポスト日本版) - YouTube
前もいったとおり、わたしはブレイディみかこさんがちょっと苦手なのだが、それはそうとして、じつに興味深い話だった。イギリスには「Brain rot」という流行語があって、SNS ばかり観ていると「頭が腐るぞ」という意味なのだが、これを流行らせたのが、十代の子たちだっていうんだよな。そういう意味で、ブレイディさんは、将来に希望を見ていた。
 しかしこれも気をつけないと、文化資本をもっている人間が、下らない SNS ばかり観ている「意識の低いクズ」を、Brain rot だと差別することにもなりかねない、と思うが……。
 あと、オンライン・ミソジニーっていう、SNS で女性を叩く文化(?)。これは日本でもマジひどいよね。イギリスでも、女性議員へのミソジニーとか、ひどいらしい。イギリスでは、そういうのに対抗する考え方が、既に学校で教育に積極的に取り入れられているという。しかし、ミソジニーとか、男って(と一般化しちゃ、いけないか)我ながらイヤな生き物だねえ……。でも、いいことだとはまったく思わないが、わたしにもミソジニーはある、と自覚している。