モレラ岐阜で映画「関心領域」を観る

曇のち雨。
 
朝いちばんで、本巣市の TOHOシネマズ モレラ岐阜へ映画『関心領域』を観に行ってきた。NHK の「キャッチ!世界のトップニュース」には月に一回、藤原帰一さんの「映画で見つめる世界のいま」というコーナーがあるが、それで知った映画である。
 映画は、アウシュヴィッツ強制収容所の所長であるルドルフ・ヘスの一家の、裕福で凡庸な、いわば幸福な生活を描いている。家の敷地は強制収容所の隣であり、妻が丹精込めて作り上げた庭は、彼女の自慢だ。ヘスはまあよい夫といってよく、子供たちにはよき父親であろうとし、アウシュヴィッツからの転属を嫌った妻を受け入れて、単身赴任すらする。ヘスの仕事ぶりはまるで優秀なサラリーマンで、仕事熱心であり、周りからの評価も高い。
 そんな様子が淡々と描写され、映画はほとんど退屈ですらある。画面の向こうからは強制収容所からの様々な声や音が響いてくるが、一家はそれに気を留めることすらない。ドイツ人の女性たちは、ユダヤ人たちが身につけていた品物を手に入れる話を、平然と日常会話としてしている。つまりは、ユダヤ人たちの虐殺をよく知っているのに、それは自分たちの「関心領域」に入らないのだ。ドラマらしいドラマもほぼなく、そのまま映画は奇妙なラストを迎える。正直いってわたしにはよくわからなかったのだが、現代のアウシュヴィッツ記念館(?)だろうか、ユダヤ人たちが身に着けていたものなどが大量に展示された清潔な建物の中で、軍服を着たヘス(だろうと思う)が何度か嘔吐する。そのシーンで映画は終わる。
 映画は、簡単にわかることだが、現在の我々のことを描いたとも解釈できる。例えば、現在においても、ガザでジェノサイドが行われている。もちろん現代日本人の我々はルドルフ・ヘスではないが、ガザのジェノサイドが我々の「関心領域」の外にあるという点では、まったくヘス、ヘスの妻と同じであるともいえる。ガザから送られてくる動画を見れば、ふつうの感覚で許容限度を越えた現実がそこに映っているが、不思議なことに、我々はそれを「関心領域」の外へ追い出して日々平然としている。
 が、である。またわたしは思う、いったい、我々はどこまでを「関心領域」に入れたらよいのか、とも。我々もまた、平凡な日常を生きねばならない。あらゆることに関心を向けるなど、不可能だ。仕事から疲れて帰ってきたあと、誰がガザのジェノサイドの動画など観たいと思うだろうか、というのもわからないことはない。正直いって、わたしはそこらあたりのことは、きっぱりと判断できない。ただ、ガザのジェノサイドは、ちょっと無視するにはひどすぎるんじゃないかと、素直に思うのもまた事実だ。
 以上のことは、じつは映画を観る前からだいたい予想していた。実際に観て、それほど意外だったことはない。ただひとつ、映画は予想以上に、ルドルフ・ヘスを、人生をいきいきと生きている人間として描いていた。動物たちと深く触れ合い、その気持ちがわかる。自然を楽しみ、家族を愛している。ただ、殺されるユダヤ人に対する、惻隠の情だけがない。これは感覚ではなく「思想」の問題であり、我々が「思想」を無視できないことを端的にいっているのではないかと思われた。ここが、映画を実際に観て、わたしが意味があったと思うところである。
 
 
帰りに CoCo壱番屋岐阜北方店にて昼食。いつものソーセージ+きのこ1106円。
肉屋へ寄る。いろいろ広告の品で安かった。雨が少し強くなってくる。
 
第678回:「つばさの党」から3人の逮捕者、に思うこと。の巻(雨宮処凛) | マガジン9
「つばさの党」についてはほとんど何も知らない。また、下らん連中が出てきたな、くらいの愚かな感想しかなかったし、そう思ったことすら忘れていたが、いや、これをマネする奴らが増えるだろうという認識はまったくなかった。雨宮さんの予感が当たるのかはわからないが、仰っていることは驚きだった、というか、納得しまくった。
『なぜなら今の社会、知名度さえあればネット関連の収益で食べていく道はいくつもあるからだ。食えるとなれば善悪など関係ないという判断をする人も出てくるだろう。私たちはとっくに、知名度やアクセス、ビュー、インプレッションといったものがすべての世界に生きている。』
 ほんとに、わたしたちはこういう世界に生きている。わたしは X (Twitter)をまったく見なくなってしまったが、YouTube はまだ見るので、リコメンドに上がってくる動画を観察していると情弱でもある程度のことはわかる。そして、もっと情弱でいいとすら、思い始めている。YouTube ひとつ見るだけで、(大袈裟にいうと)世界に絶望したくなるからだ。わたしは、下らないアニメ関連動画が見たいだけである。でも、アニメ YouTuber ですら、なんだかなあと思わせられるのが増えた。また、わたしは BBC Japan を見るせいか政治動画や日本スゴイ動画がどうしてもリコメンドに上がってくるけれど、サムネイルとヘッドラインだけで中身がわかり、もうウンザリする。そして、それらの視聴回数の多さに呆れざるを得ないのだ。玄侑さんの公式動画なんて、4桁いっていないのがほとんどなのに!