タブッキ『夢のなかの夢』

晴。
音楽を聴く。■ベートーヴェン交響曲第七番、第八番(シャイー)。第八番が偏愛の曲であることを再確認する。シャイーは元気な演奏。もう少しデリカシーを以てなどとちょっと思ってしまうのだが、ないものねだりだろう。現代的な演奏というのは貴重なものだから、肯定したいと思う。

タブッキ『夢のなかの夢』読了。和田忠彦訳。古代から現代までの著名人が見た夢というテーマで書かれた短篇集。選ばれた人物は、ダイダロスオウィディウスに始まり、ロルカフロイトで終わる。人物の特徴に合った夢を創造しているのだが、一篇が短すぎはしまいか。各篇が、さてこれからというところで終ってしまう。雰囲気はいいのだが、ボルヘスには到底及ばないなあと思った。どうも論理的、幾何学的な、くっきりとしたところに乏しいのだ。幻想小説は、イメージが曖昧模糊としているようにも思われているが、優れたそれは、イメージははっきりしているものである。それでなくて、どうして言葉で以て幻想を表現できるだろうか。と否定的なことを書いたが、おもしろくないことはないのですよ。幻想小説が好きなので、ちょっと評価が厳しくなったと御承知おき願いたい。訳文は練達。

夢のなかの夢 (岩波文庫)

夢のなかの夢 (岩波文庫)