駒村康平『大貧困社会』/島田雅彦『彼岸先生の寝室哲学』

曇。
駒村康平『大貧困社会』読了。本書でも、日本が既に貧困大国であることが実証されている。本書では格差社会にも触れ、格差問題よりは貧困問題を優先すべきであると主張されている。これは確かにそうあるべきだろうが、実際問題として、格差問題に対応することで貧困問題に光を当てることも可能なのではないか。一見、貧困問題のような「絶対的」問題の方が、格差問題のような「相対的」問題よりも優先すべきように考えられるけれども、自分には格差問題も重要視すべきであるように、どうも思える。例えば、アメリカは世界一の経済大国であるが、国民の間の格差が、深刻な問題になっている。ここいらは、もう少し論理化してみたい。
 本書では年金問題についても詳しい。この問題の原因は、高度成長時代の誤った政策によるものであるようだ。解決策は、消費増税しかないのであろうか。むずかしいところである(消費税が3%から5%に上げられた時は、それによる景気の悪化で、税収は却って減少した)。それから、本書の強調するところであるが、小さな政府で格差が小さくなることはあり得ない。大きな政府で格差小か、小さな政府で格差大であるかしかないのだ。しかし日本では、その非論理的な選択を選ぶ国民が多いという。その20%が、選挙の撹乱要因になると、著者は手厳しい。著者としてはどうも、大きな政府で格差小の、北欧型のモデルに同情があるように見える。しかし個人的には、選択としては大賛成なのだが、それを選び得るほど日本人は成熟していないようにも感じる。
 本書は具体的な数字が多く挙げられている。これは専門家に役立つだろう。が、一般人がこれを活用することはむずかしい。堅いがっちりした記述を一般人はどう読むか。ここいらもまたむずかしいところではある。

大貧困社会 (角川SSC新書)

大貧困社会 (角川SSC新書)

島田雅彦『彼岸先生の寝室哲学』読了。エッセイ集のようなもの。まあ挑発的な法螺なんだろうが…呆れますね。こんなのを読んでいると、自分が幼稚園児のように思える。徹底したお下劣ぶりに、あちこちで笑わされましたよ。周知のごとく、エロスは笑いと親和性があるのだ。著者の主張の真実性は自分には判断のしようもないが、小説家として、コスモポリタンな下半身を求めるというのは、どう考えても正しい。これからも世界中でヤってくださいな。
彼岸先生の寝室哲学 (ハルキ文庫)

彼岸先生の寝室哲学 (ハルキ文庫)