吉田たかよし『世界は「ゆらぎ」でできている』/ナサニエル・ウェスト『孤独な娘』

晴。
音楽を聴く。■モーツァルト:ピアノ・ソナタ第四番、第五番(ピリス新盤)。■ハイドン:ピアノ・ソナタ第四十四番、第四十番(リヒテル)。

吉田たかよし『世界は「ゆらぎ」でできている』読了。量子力学も「ゆらぎ」だし、超ひもも宇宙も「ゆらぎ」、心臓の拍動も「ゆらぎ」だというのは、まあ面白いとい云えばそうなのだが、それらに何の関係があるのかね。それに、物理の啓蒙書を読んでいると、最初の方はどれも同じようなことしか書いていないのが無駄だ。さても、「ゆらぎ」で繋がっているのはわかるから、その間の関連をはっきりさせてほしかった。本書の記述だけだと、「ああ学際ですね。よかった」ということにしかならない。「1/fゆらぎ」も、俗説の根拠がないことなど、数行書いておけばいいことで、その本質(というものがあれば)を書いて欲しかった。「1/fゆらぎ」のパワーは周波数に反比例するというのは(数式を書いておけば当り前だが)いいけど、自然の中に「1/fゆらぎ」が多い理由はよくわからない、だけではね。それから蛇足だが、「名前負け」っていうのは、他人の名前に自分の名前が負けることではないですよ。

ナサニエル・ウェスト『孤独な娘』読了。丸谷才一訳。さて、本当に本書は傑作なのか。例えば文明の矛盾。そんなことで主人公(一応断っておくが、男性である)の倦怠と消沈が生じているのなら、彼は現代にあればどうしようもないだろう。三〇年代でそんなだとすれば。しかし、本書は読者に嫌悪感を与える力は、まだ失っていないと云えるかも知れない。主人公は愚か者で、読んでいてうんざりさせられる。その点で、かろうじて評価できるだろうか。訳文は見事。
孤独な娘 (岩波文庫)

孤独な娘 (岩波文庫)


傲ると碌なことがないな。謙虚に。