本村凌二『古代ローマとの対話』/ドゥルーズ、ガタリ『千のプラトー(下)』/シューベルトの即興曲集D.899

晴。
本村凌二古代ローマとの対話』読了。古代ローマの歴史からのエピソードを、堅苦しくなく、エッセイ風に語っている。西洋の古代史に興味のある人には、楽しい読書になるだろう。

古代ローマとの対話――「歴史感」のすすめ (岩波現代文庫)

古代ローマとの対話――「歴史感」のすすめ (岩波現代文庫)

ジル・ドゥルーズとフェリックス・ガタリの共著『千のプラトー(下)』読了。資本主義分析である、第十三章「捕獲装置」は難解。本巻はそれ以外は基本的に、「平滑空間」と「条里空間」の対立概念を軸として書かれている(あと、「戦争機械」ね)。全体として、再読は(当り前かも知れないが)とても刺激的だった。『アンチ・オイディプス』と共に、また時間をおいて読み返そう。
千のプラトー 下---資本主義と分裂症 (河出文庫)

千のプラトー 下---資本主義と分裂症 (河出文庫)


シューベルト即興曲集D.899を聴く。クリフォード・カーゾンのピアノで聴いたが、じつにいい演奏だ。カーゾンのピアノは、エロス性はないけれど、それ以外は技術も情感も、理想的に思えるくらいだ。この演奏でも、キモである第一楽章が絶品。音の悪さを忘れてしまう。
20世紀の偉大なるピアニストたち?クリフォード・カーゾン

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グルダの演奏も聴いてみる。意外なことに彼のシューベルトの録音はほとんどないらしく、このディスクも死の前年のプライベート録音らしいが、大変な名演だ。とりわけ第一楽章。これがほとんどすべてだ。聴いていて空恐ろしくなってくるような演奏で、感情の動きにつれ、テンポやタッチが目まぐるしく変化する。またそれが、見事にツボにハマっているのだ。ライナーノートのグルダ自身によるコメントで、彼は、シューベルトは自分に近すぎて、敬遠してきた云々と書いているが、これはグルダにしか出来ない演奏になっている。最晩年、グルダは自分が世間から忘れ去られたというようなことを言っていたらしいけれども、俄には信じられないような話だ。
シューベルト:即興曲、他

シューベルト:即興曲、他


衝撃の事実(参照)。各国別に比較した、学術論文の数をグラフ化したものであるが、日本の学問が(「も」?)危機に瀕していることがよくわかる。このままだと、中国に抜かれるのも時間の問題だろう(失礼。すでに抜かれていました。米国と中国は右の軸だった)。どうやら国立大学の法人化が大きな原因ではないかと推測されるが、それは措いてもねえ… 学問の停滞は、時間をおいて必ず国力の低下に帰結するだろう。本当に日本は、目に見えにくい部分も次第に崩壊していきつつあるようだ。