砂田利一『バナッハ・タルスキーのパラドックス』

曇。
有限群を Ruby で実装することを考えていた(参照)。とりあえず 3次の対称群から始める。
ラーメン「Nageyari」にて昼食。つけ麺中盛 850円。

引き続き有限群の実装。クラインの四元群や、n次の対称群など。
図書館から借りてきた、砂田利一『バナッハ・タルスキーのパラドックス』読了。一般向けの本ではあるが、岩波科学ライブラリーであるから、レヴェルは結構高い。バナッハ・タルスキーのパラドックスそのものというよりは、数学における無限概念と、特に「選択公理」に関する解説である。選択公理集合論の最初の方に出てくる有名な公理で、正しいかどうかはわかっていないのだが、現代数学において普通に仮定されている公理である。しかしこれが問題含みで、選択公理を認めると、直感的には正しいと思えないような命題が証明できてしまう。そのひとつが、「バナッハ・タルスキーのパラドックス」というわけだ。その「パラドックス」は本書ではこう表現されている。「大きさの異なる二つの球体KとLをを考える。このとき、Kを適当に有限個に分割し、それらを同じ形のまま適当に寄せ集めることによって、Lを作ることができる」。どう考えてもおかしいだろう、Kがサッカーボール大、Lが太陽並みの大きさであっても、可能だというのだから。しかし、選択公理は多くの場合で使われる有用な公理であり、これを仮定することは決して不合理とは言えないようでもある。その選択公理を簡単に正確に表現することはむずかしいが、まあ、集合の集まりがあったとき、それぞれの集合から代表を選んできて、それらによってまた新たな集合を作ることができる、という感じだろうか。こう言うと別に不都合はないように思われるかも知れないが、これが「必ず」できるというのが問題なのである。つまり、その「構成方法」(アルゴリズム)がわからなくても、とにかく「必ず」可能だとしてしまうのだ。たとえ構成方法は人知を超えていたとしても、である。
 なお、本書の最後に、付録としてバナッハ・タルスキーの定理(と云うべきだろう)のきちんとした証明が載っている。これを見てみると、僕のレヴェルではむずかしいが、まったく理解不能なむずかしさというのではないようだ。優秀な学生だったら理解できるであろう。分量もさほど多くはない。もうすこし勉強して、わかるようになったらおもしろいだろうなあ。

バナッハ・タルスキーのパラドックス (岩波科学ライブラリー (49))

バナッハ・タルスキーのパラドックス (岩波科学ライブラリー (49))