向井敏『表現とは何か』読了。浅田彰のいう、「認識論的切断」以前の本である。それだから直ちにいけないという訳ではないのだけれども、平成五年刊というのが驚かれるほど、古臭いことは否めない。またもや山崎正和であり、丸谷才一かと思う。自分は一時期、丸谷才一の引力圏にある人々をよく読んでいたので知っているが、この人らには、「イデオロギー色のあるものを一切認めない」というイデオロギーがあるのではないか。こういうやり方では、イデオロギーを殺すことはできないのである。まあもちろん、イデオロギーを免れることなど、ほとんど不可能ではあるけれども。
しかし、と思う。若い人らでこういうものを読んだことがないのなら、一度は読んでおいたほうがよいのかも知れない、と。ここにあるのは今の時代には閑文字だが、確かに、直ちに空疎ばかりではない。
- 作者: 向井敏
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 1993/04
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