晴。
音楽を聴く。■バッハ:イギリス組曲第一番(ペライア)。この曲はグールドの演奏ではよくわからなかったのだが、ペライアのは説得的。■ベートーヴェン:弦楽四重奏曲第一番(グァルネリSQ)。初期ベートーヴェンもいいなあ。傑作。グァルネリSQは重厚。■シューベルト:「さすらい人」幻想曲(ペライア)。とてもバランスがいい演奏。聴かせどころですべて聴かせる。
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フローベール『ボヴァリー夫人(下)』読了。うーむ、これは凄い。近代においては、悲劇は上層階級にては起こらず、却って平凡に見える家庭で起こるのかも知れないなどと、陳腐なことを思ってしまうくらいである。エンマの転落は、自業自得であるとは云えるだろうが、甘美でロマンティックな空想に溺れる癖と、女性的な魅力が彼女を破滅させたわけで、こういうことは今でもありそうだ。近代的な「恋愛」というのは、我々においても既に普通のことになっているけれども、かかる煩悩というものは、平凡な我々にはなかなか逃れられないものになっている。いや、自ら望んで、その中に落ち込んでいくのだ。
それにしても、昨日も書いたが、著者の筆致は残酷なまでに容赦ない。だいたい、本書はエンマの自殺で終らず、シャルルも程なくして死に、俗物のオメーの成功を語る「彼は近ごろ名誉勲章をもらった」の一文で完結するのだ。
しかし、恋を望んで已まない今の若い女性らが本書を読んだら、どういう感想を抱くか興味がある。恐らく、ここまで女性心理を解剖し尽くしたのを見せつけられても、自分だけはこんなことにならないと、こう思うような気がするが。そううまく行くといいのだけれどね。
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