フローベール『ボヴァリー夫人(上)』

晴。
フローベールボヴァリー夫人(上)』読了。前にもちょっと書いたが、以前読んだのは中村光夫訳という特異なエディションだったので、オーソドックスな定評ある伊吹武彦訳で読んでみた。今となっては少し古びた日本語で訳されているが、素晴らしい。これなら、「今を生きる文章で」訳された新訳はいらないと思った。ただ、今では英文学の、中野好夫の名訳ですらわからない若い人が多いのだものなあ。ライトノベル村上春樹ばかり読んでいれば、そうなっても仕方がないけれど。残念なことに、この岩波文庫版、活字がじつに細かい。そこだけは今の方がいいと思う。
 話は周知のごとく、夢見る奥様の不倫物語。下らないといえばそうだが、これが近代小説の最高峰のひとつなのだ。とにかく描写を見て欲しい。これこそ、残酷なほどのリアリズム。

ボヴァリー夫人 (上) (岩波文庫)

ボヴァリー夫人 (上) (岩波文庫)