ウィーナー『サイバネティックス』/森山大道『昼の学校 夜の学校+』

晴。暑い。

ウィーナー『サイバネティックス』読了。今ではサイバネティックスは、ある(学問)領域では当り前すぎて意識されないくらいであるが、本書はそれを単独で切り開いた、二十世紀の古典である。シャノンと共に情報理論を確立し、コンピューターの基礎、脳のシナプスの働きの「数学化」など、現代において華々しく発展する分野を創造した。本書はまだ学問の取っ掛かりであり、使われている数学もかなりむずかしく感じる。ギブスの統計力学ルベーグ積分で基礎づけたというのは、恥ずかしながら知らなかった。
 このように、ウィーナーは大変に頭の切れる科学者であったが、いわゆる文系分野についても広い知識をもっていたようで、読んでいると、科学者の「無知」に憤りを感じているように読めるところもある。これはちょっと意外だった。とりわけ、科学者が自分の研究内容につき、社会倫理的な反省をもたないことに対して、はっきり批判的だと思われる。
 なお、先日のエントリーで、岩波文庫に下手な解説はいらないと書いたが、本書の大澤真幸の解説は、サイバネティックス社会学における構造‐機能分析の類似性を指摘した、優れた論考である。こういうことがあるから、やはり一概なことは云えないな。

ウィーナー サイバネティックス――動物と機械における制御と通信 (岩波文庫)

ウィーナー サイバネティックス――動物と機械における制御と通信 (岩波文庫)

森山大道『昼の学校 夜の学校+』読了。一気読み。森山の真似をして、街の写真を撮りたくなるやつが多いのはよくわかる。本書所収のわずかなものでさえ、じつにインパクトがある。まあ自分など、写真は素人のさらにビギナーであり、ただ単にシャッターを押して「写った。楽しい!」というレヴェルであるが、森山大道の写真も、プロなのにそういう面白さを失っていないのがいい(エラそうですみません)。語りも正直なのに恰好いいよね。
昼の学校 夜の学校+ (平凡社ライブラリー)

昼の学校 夜の学校+ (平凡社ライブラリー)


突然、聴きたくなりました。